《三菱UFJ貸金庫事件》の発覚後、メガバンク行員たちの顔が青ざめたワケ…「管理体制はどこも似たり寄ったり」
メガバンク行員の大きなため息
銀行業界を震撼させる大事件が公表されてから1ヵ月以上が経った。 管理職の行員が貸金庫から顧客資産を窃取していたと三菱UFJ銀行が発表したのは、11月22日のこと。盗まれたのは練馬支店と玉川支店の貸金庫に保管されていた総額十数億円の金品で、被害に遭った顧客は約60人にものぼるという。4年半にわたる犯行だった。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” 10月31日に事件発覚の後、当該行員はすみやかに懲戒解雇されている。この元行員は貸金庫業務を統括する立場にあった40代の女性で、銀行側が保管していた貸金庫のスペアキーを使って犯行に及んでいた。 あるメガバンク行員の藤川和彦さん(仮名)は大きなため息をつく。 「お客様からの苦情や問い合わせは、増えたなんてレベルじゃない。『銀行員はみんな悪いことをやっている』といった言いがかりが激増しています。通常業務も手につかないような状況です。 『20年前にアンタんとこの支店口座に1000万円ぐらい預金していたはずだ』なんていう電話も先日ありました。銀行は10年分しか取引履歴を保管していないので、そこまでさかのぼった調査はできません。その旨を伝えたら、『お前らが盗んだんだろう!』となじられまして…。 基本的にどの問い合わせでも、こちらが少しでも説明に躊躇しようものなら、すぐに『銀行がなにか隠蔽している!』ですからね。もうノイローゼになりそうです」 今回の元行員による窃盗事件を受けて、三菱UFJ銀行は12月16日に記者会見を開いた。現役行員はどのような感想を持ったのだろうか。別のメガバンクの行員である三ツ橋徹さん(仮名)が語る。
「まさかウチの銀行も…」
「私は同情の気持ちしか湧きませんでした。貸金庫サービスの管理体制はどこの銀行も似たり寄ったり。結局、魔が差してしまった貸金庫業務の統括者がたまたま赤い銀行(三菱UFJ銀行)にいたというだけの話で、個人的にはどの銀行でも起こり得る話だと思っています。 口にこそ出さないものの、『まさか同じ手口でウチの銀行もやられてないよな』『全銀行に一斉点検が入ってウチも摘発されるんじゃないか』と戦々恐々としている行員は多い。私自身、非常に緊張感を覚えています」 先の会見では、再発防止のための対策も発表された。今回犯行に使われた支店保管のスペアキーを、本社が一括で保管する運用に変更するという。 「ウチでも同様の管理方法に変わるのではないかと噂されています。赤い銀行が本社一括管理なのに、ウチはやっていないなんて言えないでしょうから。 ただ、貸金庫の鍵を忘れてきたお客様が『どうしてもその日に開けたい』と言うケースはあるんですよ。これまではスペアキーが使われていたわけですが、これからはそれができなくなる。同僚の貸金庫担当者は『管理方法が変わったらクレームが増えるんだろうな…』とボヤいていました」(同前) そもそも、銀行内での窃盗が4年半も明るみに出なかったことについては、元行員が貸金庫に近づいても怪しまれない管理者の立場だったことが大きい。しかし、冒頭の藤川さんは「銀行内のヒエラルキーも関係していたのでは」と推測する。 「会見では元行員の肩書きを『営業課長』と説明していましたが、要は窓口業務における業務責任者です。どの銀行でも多くはこの課が貸金庫業務を担当しています。収益至上主義の銀行では、法人営業や個人営業といった稼ぐ部門のヒエラルキーが自然と高くなります。対して、直接的に大きな収益を生み出さない営業課のヒエラルキーは行内でも低い。 どの行員もこの部署の人間の動向には興味がありません。むしろ『誰が飯を食わしてやってると思ってんだ?』と見下しているくらいです。そんな“存在感の薄い部署”だったからこそ、気づかれずに窃盗を実行できた側面もあるかと思います」