「京急」と「京成」の関東私鉄2社に照準定めた旧村上ファンド系の思惑 2006年の「阪急・阪神合併」の再現なるか
■2社に共通する課題とは 京急と京成の事業規模はほぼ同じだ。営業収益や営業利益、総資産の規模などは似通っている。折しも、両社ともに業績好調だ。京急は羽田空港、京成は成田空港からのアクセス線を抱えている。訪日外国人の増加を受けて、観光客の鉄道利用が増えている。 京急はとくに羽田空港に乗り入れる空港線の鉄道利用が増加。11月初旬に、営業利益と最終利益の2024年度通期見通しを上方修正した。 京成は2024年度の通期見通しを期初の数字から変えていない。ただ鉄道事業が好調なことから、営業収益と営業利益が上振れることは必至だ。
業績が好調な反面、資本効率に対する経営の意識という点では不十分な面もある。 京急は株価が軟調で、11月22日時点のPBR(株価純資産倍率)は0.91倍と1倍を割っている。京成も約6600億円の時価総額に対して、持ち分適用会社のオリエンタルランド(OLC)株が約6兆1500億円と、資本のねじれを起こしている。 こういった資本効率面での甘さを旧村上ファンド系に突かれた形だ。 「招かざる客」の突然の来訪を2社はどう受け止めているのか。
「『品川』は焦っている」と、前出の市場関係者は話す。「品川」とは品川駅を起点とする京急のことだ。 「旧村上ファンド系はあれこれと要求してくるはず。『経営統合しろ』『配当を増やせ』『自己株買いしろ』『不動産を売れ』とふっかけるのが得意。最後はドロドロの論争になって、そこで株価が上がれば、イグジットしていく」(同) こういった「剛腕」を知っているからこそ焦り、京急は警戒感を強めているという。 ■緊迫化への懸念は京成のほう
事態が緊迫化する懸念があるのは京成のほうだ。同社にはすでに「物言う投資ファンド」が大株主にいる。1.97%の株を持つパリサー・キャピタル(イギリス)だ。今年6月の定時株主総会で、パリサーがOLC株の一部売却を求める株主提案を出したことは記憶に新しい。 提案は否決となったとはいえ、京成の姿勢を不安視する声が聞こえてくる。「京成はその後も何か抜本的な資本政策を打ち出しているわけではない。外部から見ていても対策が不十分で『どうにかしないのか』と思ってしまう」。大手私鉄の関係者はそう語る。