「健康効果がある?」スナック代わりに妊婦や幼児が“土を食べる姿”にネット騒然…奇妙なブームに安全面で懸念も
「土を食べることは美容や健康に良い」。こう主張する人々が、SNS上で土や粘土のかたまり、岩石の一部などを食べる動画を投稿している。様々な種類の食用グルメ土も販売されており、健康食品としての土が盛り上がりを見せている。 【動画】妊娠37週目で土を食べる妊婦や小さな子ども
愛好家続々! 土で健康改善?
ニューヨーク・ポスト紙によれば、土を食べる人々は「クランチャー(噛み砕く人)」と呼ばれており、ネット上で健康や美容へのメリットを誇らしげに宣伝しているという。 「腸の健康の改善」「アンチエイジング」「ニキビやフケ症が治る」など、クランチャーたちは様々な効果を主張している。TikTokなどのSNSに投稿された動画には、妊婦がスナック菓子を食べるように土を口に運ぶ様子や、有機農法用だという土を、小さな赤ちゃんがなめる様子などが映っている。
土が毒素を排出 歴史的仮説は本当か?
デイリー・メール紙によれば、粘土、岩石、土などを食べる行為は、世界のいくつかの地域で何百年も前から行われてきたという。伝統的には、食生活で不足しがちなミネラルを摂取したり、食料のかさ上げをしたりするための方法だったらしい。 しかし現代の豊かな国で土食をする人々は、そういった昔の問題とは無縁だ。英レディング大学のグンター・クーンレ教授は、歴史的に土が体内の毒素を排出するという仮説があると説明。それに基づいているのが、現代の土食ではないかと述べている。過去にはイギリスの国民保健サービス(NHS)も、毒素を吸収し体外に排出するのを助けるとして、カオリンと呼ばれる白土の一種を処方していたこともあったそうだ。 ニューヨーク・ポスト紙によれば、科学者のなかには、土壌は人の腸内フローラの進化に貢献している、土に触れることで肌や免疫システムが改善されるという主張もあるという。
グルメな食用土も人気 安全面での懸念も
土食の人気を受けて、ネットの通販サイトには、様々な種類の土や粘土、岩石などが販売されている。デイリー・メール紙によれば、販売業者は、「中程度の歯ごたえでとても心地よい土の風味」「野生のハーブの香りのあとに、わずかな酸味を感じる」など、ワインショップで見かけるような説明を付けているという。 ニューヨーク・ポスト紙によれば、一般的に食用土はクレイ(粘土等を固めて乾燥させた状態のもの)の形で販売されており、品質や量にもよるが、1袋11ドル(約1500円)から27ドル(約3800円)程度で売られているという。 土食を投稿するナチュラル系インフルエンサーは、「一日中食べていられる。食事もいらないぐらい」とコメント。土の味自体が好みで、「だれが何と言おうと気にしない。誰も私が土を食べることをやめさせることはできない」とかなりの入れ込み具合だ。 盛り上がりを見せる土食だが、安全面での懸念もある。クーンレ教授は、土の中には汚染物質、特に重金属が含まれている可能性があると指摘。土は“食品”とはみなされないため、安全規制当局のチェックの対象にはなっていないことにも注意が必要だとしている。健康効果に期待して土を食べようとする人は、事前に医療専門家にアドバイスを求めたほうがよいということだ。
文:山川真智子