キックボクサーがボクシングを目指すワケ 緑川創「今しかチャンスはない」
5月に武居由樹(28)がWBO世界バンタム級王座を、10月に那須川天心(26)がWBOアジア・パシフィックバンタム級王座を獲得した。RISE、K-1で活躍した左右田泰臣(36)は21日、日本スーパーウエルター級最強挑戦者決定戦に臨む。ボクシングでキックボクシング出身者の活躍が目立つ今年、新たにキックから転向した2人に、ボクシングを目指したワケを聞いた。 シャオリン孝司(33)は9月のデビュー戦に判定勝ちし、3日の東日本新人王スーパーライト級決勝に進出した。 キックではK-1系を中心に出場して5勝(2KO)9敗1分け。Krush王者を目指していたが3連敗して「この年齢で連敗したので辞めようと思った」と引退を決めたが、体力の限界というわけではなかった。 キック時代からボクシングを教わっていた協栄ジムのトレーナーから転向を誘われ、「人生一回なので、今転向しなかったら後でやると言ってもできない」と決断。パンチのタイミング、テンポ、距離、重心など「全く別競技なので全部」で適応に苦労しているが、「ボクシングはすごく奥深い」と感じている。 キックからボクシングへの転向は「最近多い」と感じている。適応できる選手が増えてきた理由を、シャオリンは「キックでもボクシング技術が上がっている」からと指摘した。彼のようにボクシングジムで学ぶキックボクサーは多い。 老舗・新日本キックで日本ウエルター級王座とWKBA世界スーパーウエルター級王座を獲得し、アンディ・サワー、“ブラックパンサー”ベイノアら強豪を破るなど日本キック中量級を代表する選手だった緑川創(37)は10月31日、6回戦でデビュー。中国のワン・ダソン(26)とのタフマッチを判定で制した。 緑川は元WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志氏と親交があり、20代前半からボクシングの練習を続けていた。「もともとボクシングをやりたかった。試合もしたかった」が、日本のボクシングは他の格闘技と兼業できないため、昨年2月のキック引退までは現実的ではなかった。 キックでは完全燃焼したが、「ボクシングをやりたいなという気持ちがあるまま、1回きりの人生を過ごしていくのはイヤだ。今しかチャンスはない」と決断したのはシャオリンと通じる点だ。 37歳になり、年齢も「多少は考えます」と苦笑しつつ「そう言ってたって時間はたっていくだけ」と、“今が一番若い”を実践している。デビュー戦を終えて「めっちゃ難しい」と痛感した緑川だが「年齢的にも時間がないんで、できる限りいろいろ考えて練習して、ちゃんとボクシングができるようになって、全部勝っていきたい」と前向きに語った。 緑川とシャオリン、30代の挑戦を応援したい。(デイリースポーツ・藤澤浩之)