名スカウトがチェックした甲子園のドラフトA評価は4人
夏の甲子園も、ベスト4が出揃い、ネット裏のプロスカウトの人数も少なくなった。スカウト陣にとって、地方大会から甲子園が高校生候補選手の最終チェックの場所。今大会での評価の上げ下げを元にドラフト会議の指名候補者を高校生だけで、評価順に70人ほど並べることになる。 元ヤクルトの名スカウトで、古田敦也や宮本慎也を発掘した片岡宏雄氏に、別表のように、甲子園出場組の中から、いわゆるA、A´B評価をつける上位候補をリストアップしてもらった。片岡氏は「10年に一人の特Aと言われる選手はいないが、好投手が目立ち、野手に関しても例年レベルの選手も揃った。二塁手にいい選手がいたなという印象がある」と、大会を総括した上で、大会ナンバーワン評価のドラ1候補として作新学院の今井達也投手の名前を挙げた。 「BIG3よりも、私の評価としては、一枚今井が抜けた存在に見えた。152キロを出したのは甲子園特有の火事場の馬鹿力だったかもしれないが、制球力もあり、間合いを持っていてピッチャーらしいピッチャー。特に肘の柔らかい使い方からシャープな腕の振りが目についた。肘の使い方というのは教えられるものではない。球離れがよくボールの回転がいいのも、そのせいだ。細身だが全身にバネを感じさせ、PL時代の前田健太、堀越時代の岩隈久志を彷彿させるものがある。下半身が鍛えられてくれば、もっとスピードも増すし制球力もつくだろう。伸びシロも感じさせる」 県大会では、ストレートの最速が150キロを超えたことはなかったが、1回戦の尽誠学園戦では最速151キロをマーク、13奪三振で完封勝利。ベスト8進出を決めた花咲徳栄戦では、さらに1キロプラスの152キロを出して2失点、10奪三振。先発を回避していた「BIG3」の左腕、高橋昂也が4回からマウンドに立ったが、主役は今井の方だった。しかもストレート一本ではなく、カットボールをうまく織り交ぜる投球術まで見せて、片岡氏をうならせた。 「BIG3」の寺島成輝(履正社)は、藤平尚真(横浜)との直接対決で雨で何度もゲームが中断する集中力が途切れがちなゲームを投げきったが、一方の藤平は先発ではなく、緊急登板して打たれた。その寺島も常総学院戦では、先発ではなく、リリーフ起用されてベスト16で姿を消した。片岡氏は、大会前に「BIG3」の中での1番手として寺島を推していたが、その評価は変わらないという。 「3投手に関しては、急なリリーフでは準備不足。監督の起用法に疑問が残ったが、私が評価するのは寺島だ。手を抜くような“とっぽさ”が気にはなるが、一生懸命投げればどこまでできるのかを見せた。中日にドラフト1位指名され、1年目から1軍抜擢されている東海大相模の小笠原よりも現時点で力はスケールも含めて上だと思う。直球で空振りを取れ、リズムが抜群でリリースポイントが安定している。春から急成長してきた高橋は、制球力に重点を置いているようだったが、要所でのボールには力がある。藤平は全身を使った力強いフォームだが、もう少し緩急をつけたい。走者を置いてピッチングに課題が残った」