『虎に翼』高橋克実&田口浩正の笑顔が恐ろしい 寅子の前に立ちはだかる“クセ者兄弟”
『虎に翼』(NHK総合)は第16週から「新潟編」に突入。新潟地家裁三条支部の支部長として働き始めた寅子(伊藤沙莉)が慣れない土地で仕事と育児の両面で奮闘する姿が描かれている。そんな彼女の頭を悩ませるのが、弁護士の杉田兄弟だ。どちらも一見すると田舎の気のいいおじさんなのだが、腹の内はなかなかに黒い。 【写真】そっくり!? 全く同じ構図の高橋克実&田口浩正 特に高橋克実演じる兄の太郎。三条支部の職員はもちろんのこと、地元の人々とも幅広いネットワークを築いている彼の口癖は「持ちつ持たれつ」。「持ちつ持たれつ」とは、相互扶助、つまり助け合いのことだ。それ自体は悪いことではないし、実際、太郎が商店街の人に声をかけてお惣菜を届けてくれたおかげで寅子は楽ができた。 だが、太郎は代わりに、地元の有力者である森口(俵木藤汰)の調停で便宜を図るよう寅子に促す。太郎の親切はただの善意ではなく、先に恩を売って、後からしっかり回収するスタイルなのだ。その見返りには、不正に目をつぶるということも含まれる。 法を司る者としてあるまじき行動。寅子は当然きっぱりと断るが、森口と書記官・高瀬(望月歩)の間でトラブルが発生。太郎は2人のその解決を請け負い、寅子に再度「森口さんの調停についても検討お願いしますて」と迫る。至近距離で寅子にだけ向ける笑顔はお化けよりも迫力があり、思わず身震いした。 演じる高橋は36歳の時、『ショムニ』(フジテレビ系)で遅咲きながら役者として花を咲かせた。朝ドラには今作で3度目の出演となり、2012年度前期放送の『梅ちゃん先生』では堀北真希演じる梅子の父・建造を好演。建造はいつもしかめっ面で、今回演じる太郎とは真逆の役柄である。ただ、そんな自分を変えたいと『NHKのど自慢』に出場するような健気さもあり、梅子とも度々衝突するが、高橋の演技には常に父親としての愛情が滲み出ていた。 一方、映画『フラガール』では娘に暴力を振るう父親を鮮烈に演じている。娘の顔を馬乗りになって殴る姿はなかなかのインパクトだ。2022年には『向田理髪店』で61歳にして映画初主演を飾り、寂れた町で理髪店を営む中年男性をユーモアと人情たっぷりに演じるなど、高橋は作品によってさまざまに表情を使い分けるまさに名優。今回も新潟県三条市出身の俳優としてネイティブな方言を披露しつつ、田舎のあくどい弁護士になりきっている。