『虎に翼』高橋克実&田口浩正の笑顔が恐ろしい 寅子の前に立ちはだかる“クセ者兄弟”
田口浩正が元お笑い芸人のコメディセンスを遺憾なく発揮
そんな高橋と抜群のコンビネーションを見せるのが、太郎の男・次郎役の田口浩正だ。田口はもともと、芋洗坂係長こと小浦一優とお笑いコンビ「テンション」として活動していたが、活動休止後は俳優業に専念。元芸人のコメディセンスを武器に一癖も二癖もあるキャラクターを巧みに演じる個性派俳優として幅広い作品で活躍してきた。 人気刑事ドラマ『特捜9』(テレビ朝日系)シリーズでもお馴染みで、田口演じる警視庁捜査一課特別捜査班=特捜班メンバーの一人・矢沢刑事役は、おおらかな性格でお茶の間の癒しとなっている。だが、朝ドラで演じてきた役といえば、上司に媚を売る一方で女性社員を見下す総務課長役(『とと姉ちゃん』)や、胡散臭さ満載の悪徳商人(『エール』)など、悪人ばかり。 今回演じる次郎も寅子に愛想よく振る舞うが、新潟本庁刑事部に配属された航一(岡田将生)の前では寅子に対して若干態度が横暴になるのを見ると、彼女に心からのリスペクトがあるわけではなく、その場の強い者に媚びへつらう日和見的な男なのだろう。太郎ほど見た目に威圧感はないが、差し入れを断った航一の前でいじけるようにジャケットの裾をいじったり、寅子に兄の言う通りにしろと言わんばかりに椅子の肘置きを叩いて圧をかけたりと、要望をそれとなく伝える田口の演技が細かい。 そんな杉田兄弟が笑顔で並んでいると、因習ホラーが始まりそうな不気味さがある。寅子は東京でも癖の強い“おじさん”たちと渡り歩いてきたが、彼らは仕事に対しては真面目で熱意があった。だが、杉田兄弟は違う。地元住民との関係性を良好に保ち、ひいては自分が利益を得るためなら、弁護士としての信念さえも曲げてしまう彼らと寅子がどう対峙していくのかが見ものだ。
苫とり子