中心市街地の空き家でエビの養殖 「海なし自治体」越前市でブランド化目指す 福井県
キャラクターグッズの企画・卸売りなどのウロール(本社福井県越前市広瀬町、川上正宏社長)は、新事業として同市中心市街地の空き家を活用したバナメイエビの養殖実験を始めた。排水を抑えて環境負荷を低減できる閉鎖循環式陸上養殖の技術を採用。安定した成育に必要な屋内の環境を、市内で増加している空き家に着目して整備した。「海なし自治体」発の養殖エビとしてブランド化を目指す。 同社によると、沿岸地域で行われる通常のエビの養殖は、使用後の水の放出が海を汚す一因になるとされてきた。閉鎖循環式陸上養殖は、水槽の水を浄化して循環させるため、地球環境に優しい手法として注目されている。 屋外では雨や鳥のふんによる病気でエビが死滅するリスクがあることから、同社は養殖施設として使える物件を調査。まちづくり武生の紹介で同市京町1丁目の空き家を賃借した。 居間だった10畳ほどのスペースに、縦2メートル、横3メートルの水槽とろ過装置を導入。ミネラル分を加えて温度調整した水を張り、県外業者から仕入れた体長数センチの稚エビ約600尾を放した。約3カ月間で出荷レベルの体長15センチほどに育つ見込みで、まずは実験として養殖を進める。 バナメイエビは、天ぷらやエビフライ、蒸しエビなど和洋中の幅広い料理に使われている。実験段階では地元の飲食店などに養殖エビを提供してメニュー開発などを呼びかけ、認知度を高めて出荷につなげたい考え。 川上社長は「空き家問題にも貢献しながら、地球に優しく持続可能な養殖業の新しい形を目指したい」と説明。「地元の経済活動を活性化させて地方創生に寄与したい」としており、軌道に乗れば、将来的には大規模な養殖プラントを市内に整備する計画を練っている。