ミナ ペルホネン皆川 明さんにインタビュー。皆川さんがつくるアート作品への思いとは?
ファッションにとどまらず、暮らしのアイテムや空間まで手掛けるデザイナーの皆川 明さん。創作はアート制作にも及びます。「誰かの暮らしの傍ら」にそっとあってほしいという皆川さんの思いをのせたアートを、今回4名のクリエイターの方々に預け、1カ月間暮らしていただきました。 『モダンリビング』No.277 「皆川 明さんのアートと1カ月暮らしてみたら…?」より、5回の連載でお届けします。まずは皆川さんにアートについてお伺いしました。 【写真集】ミナ ペルホネン皆川 明さんが語る自身のアート制作【皆川 明さんのアートと1カ月暮らしてみたら…?Vol.1】
”作品が日常のなかに溶け込み、風景の一部になっていってほしい”
・皆川さんにとってアートとは? 皆川 明さんが絵を描き始めたのは、19歳で北欧へ1人旅をしたときのこと。当時の皆川さんにとって、スケッチはあくまで旅の楽しみの1つでした。ミナ ペルホネンを立ち上げた頃でさえ、デザインとアートの違いについては考えていなかったそう。“作品としての絵”を強く意識したのは、TARO NASU で個展を開催された2004年のこと。以来、皆川さんが個人の表現として取り組むアート作品は、ミナ ペルホネンでの活動と並行して、多くの人々の心をつかんできました。
個展の開催で初めて“アート”を意識
2022年には東京・代官山ヒルサイドテラスのギャラリーオンザヒルにて、パリの版画工房イデムで制作したリトグラフや、東京の版画工房で制作したエッチング、ペインティングや立体作品などで構成した個展「カタワラ」を開催。「オンザヒルさんの提案で、展覧会用にイデムで何か制作しようということになったのですが、そのときはコロナ禍でパリに行けず、原画を送って石版をつくってもらいました。実際に工房を訪れてイデムの職人たちと一緒に作品制作ができたのは2023年秋のことです。エッチングは版画工房を訪れ、自分で銅版にニードルで絵を描きました」 絵を描くときには一切の迷いがないという皆川さん。版材にも下絵なしで直接描いていくのだそうです。 「自分の目の前に絵が映し出されているので、その線を追いかけていくだけなんです。リトグラフもエッチングも、描き始めたら戻れないという緊張感があるのが魅力。やり直せるということは、自分の手を油断させるということですから」