ベアがない会社に就職してはいけない!「ふつうの会社員」は40代以降、給料を上げるには「ベア」しかなくなる?
年功序列を廃止した「ジョブ型」の人事制度が広がっている。若手の登用や報酬アップにつながると労使ともに歓迎ムードが漂うが、非情な未来はあまり語られていない。「ジョブ型人事の非情な未来(1)」では、「ふつうの会社員」の給与のピークは40歳前後になる可能性を指摘した。だが、育児など資金需要は40代以降が大きく、収入を増やしていく必要がある。そこで重要なのが会社の給与水準引き上げ=ベースアップ(ベア)だ。生活がかかる会社員にとっても、優秀な人材を確保したい会社にとっても、「ベア」の重要性がかつてないほど高まっている。 【図】会社は本当は賃上げはしたくない?調査から浮かび上がるホンネとタテマエ (藤井 薫:パーソル総合研究所 上席主任研究員) ■ なぜジョブ型が広がるとベアが重要になるのか 毎年、春の賃上げ時期になると、「ベア」という言葉を耳にする。ベアはベースアップの略で、給与制度による定期昇給などとは違って、企業業績や経済状況に応じて自社の給与水準を引き上げるものだ。 新卒採用の初任給引き上げを例にとれば、前年20万円だった初任給を21万円に改定するようなことがベアにあたる。制度昇給は毎年一定の基準で実施されるが、ベアは毎年行われるとは限らない。企業によっても対応が分かれている。 前稿「給与のピークは40歳前後! ジョブ型で『ふつうの会社員』を襲う非情な未来、管理職になっても 40代後半でポストオフ」で示した通り、ジョブ型の導入が進むと、管理職に昇進しない「ふつうの会社員」は40歳前後で給与ピークを迎え、管理職に昇進して課長になっても、部長にならない「ふつうの管理職」は40代後半には給与ピークを迎える可能性が高い。職責が同じであれば等級が上がらず、給与もそれほど上がらない。 ジョブ型の導入によって、さまざまな変化が予想されるが、なかでも絶対に見落としてはならないものが「会社と社員との関係性の変化」だ。これまでの中長期的な「累積貢献度」、いわゆる年功を考慮しあう関係から、ジョブの提供とそれに対する報酬、いわばリアルタイム目線の「経済的交換」中心の関係性へと変わっていくと思われる。 とすると、働き手にとってはこれまで以上に会社の給与水準とベアが果たす役割が大きくなっていく。給与水準が低くベアもない会社に就職するインセンティブは働きづらい。今後は、明確な給与ポリシーを掲げる会社、誤解を恐れずに言えば、給与水準を上げていける企業しか優秀な人材を採用できず、生き残れないのではないだろうか。