「歩道走れないの?」「免許不要だと思った」「灯火ない方がカッコいい」…ペダル付原付の取締りで見た“ヤバさ”
「原付超え」の車両もある
自転車ではないことはわかっていても、「電動キックボードのような特定小型原付だから、運転免許不要だと思った」という利用者もいます。2023年7月に道路交通法が改定され、その内容が浸透していないこともありますが、ペダル付原付は、むしろ無免許で乗れることが例外と思ったほうが安心です。 実際、ペダル付原付の種類が増えて、動画サイトなどでのインプレッションでも走行性能を評価する解説が多くなりました。しかし、特定小型原付の最高速度は20km/h。それ以上のスピードが出る場合は、速度抑制の仕組みが付いている必要があります。ちなみにアシスト自転車のアシスト力は24km/hで完全に切れる仕組みになっている必要があります。 車両の規制を考えると、そもそも加速性能が良すぎる特定原付というのは、実は免許が必要な「一般原付」なのかもしれません。 さらに、アシスト自転車として販売される車両に、スロットル付ケーブルなどを後付けして走行性能を追及した結果、ペダル付原付が原付免許の規定を超え、自動二輪免許を必要とする乗りものになっている場合もあります。 2024年4月10日午後、渋谷区内で検挙されたペダル付原付の利用者は、無免許運転の容疑でした。乗っていた車両もその場で押収され、事情聴取のために連行されました。利用者は「これから予定がある」と警察官に話しましたが、人車ともに警察車両で移送されて、渋谷署で取り調べを受けることになったのです。形式は任意同行ですが、こうなると自転車だと思ったというレベルでは済みません。 仮に無免許運転が確定すると「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が待っています。その処分が終わった後も、今度は行政処分として運転免許を取得できない欠格期間があり、2年間は原付免許を含めてどんな運転免許も取得できなくなります。
「乗ってはいけないわけではないんです」
ペダル付原付は、居住地の自治体に軽自動車の納税申告をしてナンバープレート(課税標識)を取り付け、さらに自賠責保険に加入する必要があります。市区町村でナンバープレートを取得する場合の費用はかかりませんが、自賠責保険では保険料が必要なため、この費用を負担に感じる利用者もいるようです。 無免許と自賠責未加入の罰則は別建てなので、この状態で車両を乗り回した場合、無免許の罰則に加えて「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に問われる可能性があります。 この場合は、無免許の違反点数に保険未加入の違反点数も加算されるため、免許の取得ができない期間が、さらに長くなります。仮に、交通事故で加害者となった場合、当然保険は適用されませんから治療費は全額加害者負担です。 前述の渋谷区での取締りでは、乗っていたペダル付原付のバックライトの下に取付金具が付いているのに、ナンバープレートがなく、ねじ穴だけが目立つ車両もありました。 現状では販売者が道路交通法の車種区分「一般原付」「特定小型原付」「自転車」を明示することなく、「eバイク」「EVバイク」など車種区分をあいまいにした用語で、購入のハードルを下げている場合があります。購入者もウインカーなど必要な保安部品が付いていないほうがすっきりした印象に見えると、自転車的なペダル原付を好む人もいます。しかし、知識不足で車種区分を誤認したとしても、利用者の責任回避は難しいです。自走できる車両は、車両の形状を問わず、まずは原付バイクと同じと考える必要があります。 渋谷区の取締まりでは、わずか2時間程度の間に、無免許運転被疑者2人が検挙されました。また、歩道走行(通行区分違反)1人、ノーヘル2人、うち1人はナンバープレート未装着で、計5人が違反に問われています。取締りにあたった警察官は、違反者にこう語りかけました。 「乗ってはいけないわけではないんです。免許をとって、乗るための手続きをすれば乗れるのです」 ペダル付原付(モペット)の違反は東京都内だけでも、2022年が31件。2023年が56件。今年は2月の暫定値で37件と、利用増加に伴って急増中です。取締りにあたる警視庁交通部交通執行課の丸山佳高管理官は、次のように話します。 「モペットは自転車ではなく、原付以上のバイク。バイクに必要な交通ルールを守って安全に走行していただきたい」
中島みなみ(記者)