火鍋が100億元産業を生む!四川の小都市が秘訣を明かす
【東方新報】中国・四川省(Sichuan)の県級市である広漢市(Guanghan)といえば、多くの人が3000年前の黄金仮面が見つかった神秘の「三星堆(Sanxingdui)遺跡」を思い浮かべるだろう。しかし、この地は中国西南地域最大の火鍋産業拠点であり、中国で最も完全な火鍋産業チェーンを持つ都市でもある。2023年、広漢市の火鍋産業総生産額は155億元(約3216億2190万円)に達した。広漢市はどのような秘訣でこれほどの成功を収めたのだろうか。 北京市で開催されている「第2回中国国際サプライチェーン促進博覧会」(以下、チェーン博)では、広漢市の火鍋関連企業約30社がサプライチェーンをそのまま北京に持ち込んだ。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。牛脂からスパイス、火鍋の食材、火鍋用具、底料の加工、さらにはインスタント火鍋まで、広漢市には火鍋産業関連企業160社以上が集積している。 広漢市では三星堆遺跡から火鍋に似た形の「陶製三足炊器」が発掘されているが、実際の火鍋産業の歴史はそれほど長くない。広漢市火鍋産業協会会長であり、広漢市の食品会社「邁德楽食品」の董事長である楊礼学(Yang Lixue)は、「10数年前、大手火鍋企業が土地コストや交通の利便性に注目して広漢市に工場を建設し、それに伴って取引関係にあった中小企業も次々と移転してきた」と語る。こうして集積効果が生まれ、業界全体が雪だるま式に成長したという。 産業の集積は、企業に大きなコスト削減効果をもたらした。広漢市に拠点を置く中規模火鍋底料メーカー「四川博千億食品(Boqianyi)」の総経理である李飛龍(Li Feilong)は、年間2000~3000トンの牛脂を調達するが、地元で調達することで年間数十万元(10万元は約207万4980円)の包装費や運送費を節約できると話す。 四川省が製造業の転換と高度化を推進する中、デジタル化の波は火鍋業界にも及んでいる。楊礼学氏は、デジタル化が伝統産業である火鍋に新たなエネルギーを注いでいると述べる。楊氏の工場では、ドイツのシーメンス(Siemens)による制御システムを導入し、生産現場の効率化と標準化を実現しているという。 李飛龍氏も、火鍋底料の生産方式が進化したと実感している。以前の手作業では、熟練の職人が何時間も鍋をかき混ぜながら炒めていたが、味の均一化が難しく、効率も低かった。現在では、スマート設備の導入により、火鍋底料の品質と加工効率が大幅に向上している。 火鍋の人気が世界的に高まる中、広漢市の火鍋関連企業もグローバル市場への進出を目指している。「四川辣海生物鍵科技」の販売ディレクターである陳瑜華(Chen Yuhua)は、「北米、ヨーロッパ、東南アジアの火鍋店やスーパーに火鍋底料を供給している」と語る。国ごとに異なる規制(例えば、マレーシアのハラール認証やアメリカの牛脂製品の制限)を克服しながら、四川火鍋の魅力を海外市場で広めているという。 また、広漢市駿馬金属製品工場では、中国文化を取り入れた火鍋用具を製造している。同工場の李昕宇(Li Xinyu)氏は、川劇の顔譜(登場人物の性格や役割を象徴する、四川省の伝統的な演劇「川劇」で使われるカラフルな仮面や化粧模様)を模したホーロー鍋や、三星堆の陶製三足炊器を模したエナメル鍋を製造し、海外の火鍋店に供給している。最近では、ドバイの華僑商人が「三星堆鍋」を注文したという。 広漢市の火鍋産業は、原材料から製造、販売までを網羅する完全なサプライチェーンを形成している。効率的な産業集積、デジタル技術の導入、そして世界市場への積極的な進出が、広漢市を中国火鍋産業の中心地に押し上げた要因といえる。 未来に向けて、広漢市の火鍋企業はさらなる海外市場の開拓を目指しており、四川火鍋の味と文化を世界中に届けることを目標に掲げている。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。