スキャンダル「ビビ・リークス」に揺れるネタニヤフ政権 情報機関と検察のトップ解任説も
人質6人の殺害が発覚した直後、人質解放を求めてデモをする人々[2024年9月3日、イスラエル・エルサレム](以下、写真はすべて筆者撮影)
ICC(国際刑事裁判所)が11月21日、ハマスの軍事部門を率いるムハンマド・デイフ司令官とともに、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相に逮捕状を発行した。ネタニヤフ首相は7月にアメリカ議会で演説した際、ハマスとの戦いについて、「これは文明の衝突ではない。バーバリズムと文明国家の衝突だ」と訴えた。その文明国家を自負し、中東唯一の「民主主義国家」だと主張するイスラエルの首脳に戦争犯罪等の疑いで逮捕状が出されたのは、前代未聞の事態と言える。 ただ、ネタニヤフ首相が「法廷」を騒がせているのは、国際的な場だけではない。ネタニヤフ首相はすでに、国内で汚職や詐欺などの疑いで起訴されている。12月10日には首相本人への証人尋問が行われる予定だが、首相側は、戦争やシリア情勢の急変を理由に最後まで日程を遅らせるよう求めてきた。これだけでも大きなニュースだろうが、11月、ネタニヤフ首相の政治生命をさらに脅かしかねないスキャンダルが明らかになった。首相府の関係者ら5人が、国家安全保障を脅かしたなどとして逮捕されていたことがわかったのだ。 逮捕されたのは、首相府の関係者やイスラエル軍の予備役兵士など合わせて5人だ。なかでも事件の鍵を握るのが、ネタニヤフ首相の報道官を務めていたエリ・フェルトシュタイン氏だ。フェルトシュタイン氏は、去年10月のハマスの奇襲攻撃以降、ネタニヤフ首相の報道官に就任した。しかし、「報道官」を務めていたものの、首相府での登用にあたっては身辺調査をクリアできなかったため、いわば首相の私設報道官のようなステータスであり、肩書き上は「市民」となっている。
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曽我太一