努力すればみんな大谷翔平になれる!?努力と成果が比例しないこの世の中で「棚からぼた餅」も、生き抜くためには大切にすべき人生の考え方
大きな夢を持たなくてもいい
もちろん大谷選手を「見習おう」という人がいてもいいのです。でも、「ああいう人のまねはとてもできない」と思う人がいてもいい。 子どものうちにそういう考え方をすると、夢がない、覇気がないと批判されかねません。でも、誰もが大きな志を持たなくてもいいのではないでしょうか。 昔から道徳の教科書では、幼い頃から大志を持って努力した、寸暇を惜しんで勉強した、という人が理想のように描かれています。二宮金次郎が代表でしょうか。 一方で昔から「三年寝太郎」や「わらしべ長者」のような話も言い伝えられています。三年寝太郎は、三年間ゴロゴロしていた男が、ある時急にやる気を出して、偉業を成し遂げるという話。わらしべ長者は、1本のわらを持っていた貧乏人が物々交換を繰り返すうちにお金持ちになるという話。どう考えても彼らは努力をしていないのに、人生がうまくいくのです。 単に面白い物語だと捉えるのではなく、ある種の真理だと考えてもいいのではないでしょうか。この寓話は、努力の放棄を勧めているのではなく、「一生懸命がんばる」こと一辺倒になってしまう風潮への注意書きだと読むべきではないでしょうか。「棚からぼたもち」です。 養老孟司 1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業。専攻は解剖学。東京大学名誉教授、京都国際マンガミュージアム名誉館長。1989年、『からだの見方』(筑摩書房)で、サントリー学芸賞受賞。ほかに、『唯脳論』(青土社/ちくま学芸文庫)、『バカの壁』(新潮新書、毎日出版文化賞受賞)、『養老孟司の大言論(全3巻)』(新潮文庫)、『遺言。』(新潮新書)『バカのものさし』(扶桑社文庫)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など多数。「壁」シリーズは累計700万部を超えた。大の虫好きとしても知られ、鎌倉の建長寺に虫塚を建立し、毎年法要を行っている。
養老孟司