タイのスタジオと日本がコラボ Netflixシリーズ『Tokyo Override』が指し示した“可能性”
Netflixから、未来の東京を舞台にしたアニメーションシリーズ『Tokyo Override』がリリースされている。映画『ワイルドスピード』シリーズやディズニーによってアニメ映画化された『ベイマックス』、ディズニー映画『トロン』、『AKIRA』や『カウボーイビバップ』などの要素を感じさせる作品である。 【写真】『Tokyo Override』場面カット(複数あり) そんな本シリーズ『Tokyo Override』は、「東京」という都市が象徴する、江戸時代に代表される古来からの日本文化と最新鋭のテクノロジーが融合した、まさに現在、インバウンド需要による海外からの旅行客が望むポジティブなイメージと、底流にある社会への問題意識が融合した、興味深い内容となっていた。 ここでは、そんな本シリーズの内容や裏側の情報などから、この特徴ある作品が指し示した“可能性”について考えていきたい。 本シリーズのキーパーソンとなっているのは、深田祐輔という映像クリエイターだ。フランスやアメリカでの留学を経て、短編映画の監督、プロデュースを手がけたほか、『情熱大陸』のプロデュース、ドキュメンタリー作品のサウンドデザインなどの仕事も経験していて、本シリーズでいきなりアニメーションシリーズの監督、プロデューサーを務めたという、異色の人物である。 日本の監督が海外で注目を集めるのは、映画祭だったり、近年は作品が配信されるケースが主流だといえるが、この深田祐輔監督については、海外で南カリフォルニア大学院で短編映画を手がけたことを足がかりに、アメリカで数作のキャリアを築いたのちに、本シリーズで日本の脚本家やスタッフらと組むことになったという、かなり不思議な経歴を辿っている。 深田祐輔監督はプロデュースができる監督を目指していると公言しているように、本シリーズでもその二つを兼任しているが、自ら動いて企画を立ち上げるという行為なくして、このような作品の監督を務められるとは考えにくい。逆を言えば、英語など外国語を武器にして積極的に行動すれば、アニメーターとしてのキャリアを積むことなしに、いきなりアニメーション監督デビューするチャンスもあるということだ。 興味深いのは、本シリーズの共同監督を、アメリカのアニメーションスタジオでのキャリアもある、タイのアニメーション監督ヴィーラパトラ・ジナナヴィンが務め、さらにタイのアニメーションスタジオ「RiFFスタジオ」がメインとなって、日本のスタッフとともにアニメーションを作り上げているという点である。 最近は、インドやサウジアラビアなどのスタジオと、日本のアニメーションが共同制作するケースが出てきているように、「アニメ大国」であるところの日本の技術と、これまでとは異なったタイプの海外のクリエイターとのコラボレーションが増えてきつつある。Netflixでタイのスタジオと日本人スタッフらがコラボレーションし、日本を舞台とした作品を発信するという本シリーズの試みも、そういった国際化の一部と見ることができるが、本シリーズは絵柄や演出などの点で、むしろ“日本アニメらしくなさ”を感じさせるところが特徴的だといえよう。 それもそのはずで、共同監督としてアニメーションづくりの経験が豊富なヴィーラパトラ・ジナナヴィンは、アメリカの大作アニメーションのスタッフとしてキャリアを積んだクリエイターなのである。本シリーズがアメリカのアニメーション作品のように見えるのも当然だろう。