「部下がHSPらしい。どう対応したらいい?」 配慮しても遠慮しない…職場の「繊細さん」と正しく付き合う知恵
「え、こんなの誰でもそうじゃないの?」と思われた方、その通りです。チェックの内容は感覚の話から仕事に対する考え方まで非常に多岐にわたります。 そしてチェックリスト23個のうち12個以上を選ぶ組み合わせを計算すると、その数なんと400万通り以上……。しかもあくまで自己チェックですから、自覚的にそうだ、と思えばHSPになりえます。
じつはHSPという概念自体、研究が発展途上であり、確立されたものではありません。医学的な診断名でもありません。しかし、あまりに概念が広まりすぎた結果、言葉が独り歩きしてしまっている側面があります。 もっとも、こういった「繊細な人」が多数いらっしゃるのも事実で、「騒音に悩まされやすい」ともいえる聴覚過敏の人は5~20%くらいはいるといわれています。 HSPという言葉が生まれたことで、本人にとっての「気づき」、あるいは「自分はそうなのかも」という救いにつながったのも事実で、概念自体は意義あるものと考えられます。 が、しかし、冒頭の漫画のように配慮を求められたときの対応については置き去りになっています。 漫画の中でも、“後輩”の対応を相談された課長が「いまのご時世、配慮とかにはうるさいから、大事にしないで頑張ってよ」と“先輩”に丸投げして、逆に追い詰めてしまうような発言をしています。 ということで、ここから職場でHSPに対する配慮を求められた際の対応について、ご紹介しましょう。
職場ではどう対応すればいいの?
職場での対応には原則があります。それが「配慮はするけど遠慮はしない」です。 まずは何に困っているか、どう対応してほしいのかをヒアリングします。HSPと一言でいっても千差万別です。あくまで本人が起点になって配慮や対応をどうするかを検討し、本人と話し合います。
現行法では、すべての事業者に対して「合理的配慮の提供義務」、つまり障害者手帳の有無などにかかわらず、あらゆる障害に対して配慮を検討する義務が課せられています。そして、合理的な理由のない配慮の拒否は禁じられています。 診断書など何らかの証左があるものに対して配慮を考えなくてはならないのはもちろんのこと、いわゆる医学的な診断が出ないもの、たとえば聴覚過敏などについても配慮を検討することが必要です。 「ええ!? じゃあ、何でもかんでも要望をかなえなければいけないのか?」と驚かれるかもしれませんが、そうではありません。そこには3つの観点があります。 ①合理的配慮は「過重な負担に」ならない範囲で講じるものである ②業務遂行に必要か? ③労働契約が履行できるか? それぞれ解説します。まず①に関しては、下記のような観点から十分に検討します。 ●事業への影響 ●実現可能性 ●費用・負担の程度 ●事務・事業規模 ●財政・財務状況 早い話、その配慮を行うことで事業継続などに大きな無理が生じないかどうかということです。これは社会一般から見てどうか? という相場観も大事になります。 ②は、業務を遂行するために必要な配慮であること、です。たとえば、騒音に悩まされやすい職員に耳栓使用を許可することは検討に値する配慮です。 反対に、プライベートにかかわることまでは配慮の範疇に入りません。 たとえば、同居禁止の社員寮において、「精神的に安定するので友人や交際相手と同居したい」という要望があったとします。この場合はあくまでプライベートのことですから許可は必須ではありません。 ③は、その配慮をしても期待される役割が果たせるかどうかです。乱暴な言い方をすると、その配慮をしてもお給料分の仕事ができるか? ということです。 たとえば、窓口職員が耳栓をして窓口対応に支障が出てしまってはいけないよ、ということです。