国産小麦、パン・中華麺用が人気 輸入9割の市場で拡大めざす
「需要はじわじわ高まっている」
パン・中華麺用の国産小麦の作付けが増えている。加工に適した強力系の品種が普及し、小麦全体の4分の1にまで高まった。麦の品質向上や消費者の国産志向の高まりを背景に、大手企業が商品開発を活発化。食料安全保障の面から輸入に頼る小麦の調達先を見直す動きも、使用拡大を後押しする。 【画像】国産小麦を使ったメロンパン 国産麦は日本麺用品種が多いが、近年はパン・中華麺など強力系の品種の生産が増加。農水省によると、国産小麦全体に占めるパン・中華麺用の作付け割合は2022年度には26%で、10年間で10ポイント以上上昇した。 「国産需要はじわじわ高まっている」と語る大手製粉会社の担当者は、その理由に品種の切り替わりを挙げ、以前より収量や品質が高い水準で安定してきたとみる。近年作付けが増える「ゆめちから」がその例だ。そのため、従来は輸入麦と混ぜられることが多かった国産麦が、単独で商品化できるようになった。パン・中華麺の小麦は9割が輸入麦なだけに、「国産の使用が付加価値となり、差別化もできる」という。
大手企業 商品開発盛んに
特に、この数年加速するのが、大手の小売り・メーカーでの国産の使用拡大だ。セブン―イレブン・ジャパンは、4月から、うどんや中華麺などのチルド麺類弁当の原料小麦をほぼ全て、国産に切り替えた。「ゆめちから」「春よ恋」などを使う。 ウクライナ危機を背景とした輸入食料の高騰や供給不安など海外情勢を受け、国産使用は「持続可能な調達の一環」(広報)という。麺類の国産使用量は23年度は1万3500トンで2年で5割増やした。今後パンでも使用を拡大する。 「ゆめちから」など国産小麦を長年使用している敷島製パン(名古屋市)も昨年、「国産小麦シリーズ」を刷新。国産使用が分かりやすい包装にし、PRも強化した。販売数量は「維持・拡大しており堅調」(広報)だ。同社も海外情勢の変化を背景に「国産小麦への関心が高まってきた」と分析する。国産小麦100%の商品数は40に上る。使用する小麦に占める国産の割合は年々上昇し23年で14%となり、30年までに20%を目指す。 国内で使われるパン・中華麺用小麦の国産比率は1割で、今後拡大の余地は大きい。一方、実需は「カナダ産銘柄の1CWなどと比べると、品質の安定が継続的な課題」(敷島製パン)とみる。 こうした中、主産地の北海道では、製粉会社やホクレンなどが連携し、小麦の共同保管庫を稼働させている。保管能力を高め、年による品質や生産量のばらつきを抑える狙いがある。ホクレンは「ゆめちから」や「春よ恋」の購入希望は増えているとし、「安心して使ってもらえるように品質安定化に努めたい」とする。(玉井理美)
日本農業新聞