考察『光る君へ』14話 兼家(段田安則)が逝き、道隆(井浦新)の独裁が始まる。道兼(玉置玲央)は絶望、道長(柄本佑)は奮闘
ふたりの道のりは遠い
まひろに字を教わった、たね(竹澤咲子)は両親に名前を書いて見せたのだろう、そして父の逆鱗に触れたのだろう。それを思うと胸が痛む。 娘に文字なんか教えるなという、たねの父。女に学問は必要ないという意味かと思ったが、 「うちの子は一生畑を耕して死ぬんだ」「俺らはあんたらお偉方のなぐさみもんじゃねえ」 という台詞で、これはちがう、と改めた。 たねが息子であっても同じことが起こっただろう。最初から知識などなければ、この世に越えられない壁があると知ったとき失望することもない。余計なことを教えてくれたばかりに、うちの娘は悲しい思いをするのだと。それを百姓である父は言っている。 実際、道長が粘り強く検非違使庁の改革案を出し「身分の高い者だけが人ではありません」と訴えても、道隆に「下々のことは下々に任せておけばよい」と、はねつけられる。 この国を実質統べる者は、下々の暮らしがどうなろうと関心がない。 お互いの知らないところでずっと、まひろと道長はそれぞれ世を変えようと、自らの使命を果たそうとしている。が、道のりは遠い。
「ありえぬ」の当然
道隆が定子(高畑充希)を中宮にするという。中宮は当時、円融院(坂東巳之助)の后・遵子(のぶこ/中村静香)がいた(第2話で、円融帝に「そなたのほうがもっと綺麗であるぞ」と囁かれていた彼女である。ご記憶だろうか)。道隆の弁では、遵子を皇后にし、定子を中宮とするということだが、中宮とはもとは皇后の居室を指す言葉で、皇后と同義である。 道隆の狙いは、娘・定子を数多いる女御のひとりではなく、天皇の第一の后とすることだ。 第7話で、亡き忯子に皇后の称号をおくりたいという花山帝の願いを聞き、陣定では大揉めに揉めていた。その時にも、義懐(よしちか/高橋光臣)が遵子は中宮だから皇后の座は空いていると述べ、先例がないと却下されていたのである。当時は亡くなった女性を皇后にするか否か、帝の望みを叶えるか否かだけであったが、今回は皇后と中宮、二后を並び立たせる……定子を中宮にすることは即ち、これまでのルールを破ってまで道隆を后の父とすることであったから、公卿たちが揃って「ありえぬ」と首を横に振るのも当然であった。 しかし「朕は定子を中宮とする」という一条帝(柊木陽太)のひとこえで、陣定の決定はあっさり覆された。 ナレーションのとおり、道隆の独裁が始まったのだ。 次週予告。「おごれる者たち」のサブタイトルに平家物語──同じ平安時代大河ドラマ『平清盛』(2012年)を連想する。紫式部ゆかりの石山寺に、まひろが!兼家亡き後も、寧子に出番あり。道兼、公任に圧力? 盛り上がる為時一家、もしや惟規(高杉真宙)が婿入りか。おお、競べ弓やるんですね!ききょうに衝撃の出会い。 第15話も楽しみですね。 *このレビューは、ドラマの設定(掲載時点の最新話まで)をもとに記述しています。
【関連記事】
- 考察『光る君へ』9話 友を埋葬するまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)の表情…「ソウルメイト」とはこんな残酷な意味だったのか
- 考察『光る君へ』10話 道長(柄本佑) の激しく熱い恋文に、漢詩で返すまひろ(吉高由里子)の「幸せで悲しい」誓い
- 考察『光る君へ』11話 まひろ(吉高由里子)だって、本気で北の方になれるとは思っていない!倫子(黒木華)と同じ意中のその男性と
- 考察『光る君へ』12話 倫子(黒木華)はついに道長(柄本佑)と!庚申待の夜だもの、まひろ(吉高由里子)は朝まで飲めばいい
- 考察『光る君へ』13話 兼家(段田安則)の老いのリアルに震える、定子(高畑充希)の変顔が可愛い!未来の后ふたりが登場回