【EVの素朴な疑問】普通充電と急速充電ではEV側のコンセントが異なるのはなぜですか?
電流・電圧の大きな違いに対応するために不可欠
電気自動車(BEV)の充電には、2つの方法があります。普通充電と急速充電です。普通充電は、低い電流・電圧でゆっくりと時間をかけて行います。一方、急速充電は、高い電流・電圧で、文字通り“急速”に充電を行うのが特徴です。そして、普通充電と急速充電では、コンセントの形状が異なります。車両側のコンセントが異なるように、給電する設備側のコネクタの形状も異なります。さらに言えば、充電器からコネクタにつながるコードの太さも異なります。これはなぜでしょうか。 【写真】ひと目でわかる、世界の充電器コンセントを見る この2つの形状が異なるのは、普通充電と急速充電では、扱う電流・電圧の大きさが異なっているのが理由となります。普通充電は低い電流・電圧なのに対して、急速充電は高い電流・電圧を扱っています。そして高い電流・電圧を扱うため、急速充電のコネクタとコンセントの形状は大きく、また複雑になっています。 ちなみに、普通充電で扱う電気は、100Vの11.2A、200Vの15Aもしくは200Vの30Aの交流(AC)電流です。それに対して急速充電は一般的な50kWの充電器で150~450Vの125Aもの直流を扱います。強力な120kWや180kWの急速充電器であれば、50kW級の急速充電器の2倍以上の電力を扱うことになるのです。 安全のために、通信機能やアースなどが追加されており、コンセントの形状は、より複雑なものとなります。そして、高い電流・電圧に耐えられるように、コードも太く丈夫なものが使われることになります。 また、コンセントの形状は、世界共通ではありません。日本の場合は、日本の自動車メーカーが主体となったCHAdeMO(チャデモ)協議会が定める、CHAdeMO(チャデモ)方式のコンセント形状が採用されています。 一方、海外では、さまざまな方式が存在しています。欧米は、普通充電の交流(AC)電流と急速充電の直流(DC)電流を1本のケーブルでカバーするコンボ方式を採用します。ただし北米と欧州では、形状が異なっています。 そして中国は、Chaina GB/Tと呼ばれる独自方式を採用します。さらに世界的な規模で、テスラは独自の方式、いわゆる「テスラスーパーチャージャー(NACS:ノース・アメリカ・チャージング・スタンダード)方式」を使っています。 近年、テスラの「NACS」が他メーカーにも開放され、北米ではほとんどの自動車メーカーがNACS方式の利用を発表しています。また、日本と中国は次世代の急速充電規格を共同で導入することになっており、その新規格は「Chaoji(チャオジ)」と呼ばれています。 世界では複数のコネクタ規格が乱立するのが実情ですが、ほとんどの場合、ひとつの地域に複数の規格が併用されているわけではないので心配は無用です。また、いくつかのコネクタ規格が併用される地域では、ひとつの充電器で、複数のコネクタが用意されていたり、アダプターでコネクタ形状を変更するなどの工夫も見られます。 ●著者プロフィール 鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。