【有馬記念】距離持たないな…から「この馬は走る」に変化/ドウデュース友道師独占手記1
<栄光の道程> 長い道のりもあと1週間-。グランプリ有馬記念(G1、芝2500メートル、22日=中山)でラストランを迎えるドウデュース(牡5、友道)を管理する、ダービー3勝トレーナー友道康夫調教師(61)が、独占手記連載「栄光の道程」で愛馬との道のりを振り返る。 【写真】驚く武豊!口取りで友道師らを引っ張ろうとするドウデュース 全4回の初回は「ドウデュースは走る」と確信した瞬間について。「距離は持たないな…」という第一印象は徐々に変化していった。 ◇ ◇ ◇ 有馬記念まで残り1週間を切りました。「次がラストランか…」。ジャパンC終了後、勝った喜びとともに、ふとそう思いました。ドウデュースにはこれまでたくさん、いい思いをさせてもらいましたが、同じくらい悔しい思いも味わいました。順調にいかなかったからこそ、思い入れは強いもの。記憶に残る馬です。 2020年1月、私はドウデュースと初めて出会いました。寒く、風が強い日でした。1歳を迎えたばかりの彼はコロンとしていて冬毛がボーボー。それだけはよく覚えています。ハーツクライ産駒らしくなく、豆タンクのような体でした。 「パワータイプで、距離は持たないな…」 これが第一印象でした。 ドウデュースは頭のいい“悪ガキ”です(笑い)。気性が悪いのではありません。やんちゃで、横に馬がいると、すぐにちょっかいをかけたりします。さみしがり屋な一面もあって、牡馬、牝馬関係なく、遠目でも馬を見つけるとよく鳴きます。馬房にいる時は寝ているか、食べているか…。まるで子どもです。マカヒキやワグネリアンは“優等生”といった感じでしたが、ドウデュースは少し違います。あまり見たことのないタイプです。 それでも、走り出すと真面目です。一方で、馬場入りの時など走らなくていいところでは、とてもおとなしい。オンオフがしっかりしていて賢いです。昔から調教は抜群に動きますし、けがをしたり体調を崩したことがなく、丈夫です。2歳から5歳まで毎年G1を勝ち、1600メートルから2500メートルまで幅広く活躍してくれました。 豊くん(武豊騎手)は「スプリンターズS(芝1200メートル)を使ったら勝つ」と言いますし、3歳時には「UAEダービー(ダート1900メートル)を使おう」という話も出ていました。今でも、ダートを走らせたらどのくらい走ったのだろう、と思うことがあります。冗談の話ですが、有馬の後に連闘で東京大賞典(ダート2000メートル、29日=大井)に行こうと言うくらいです(笑い)。改めて、すごい馬です。 冒頭の通り、入厩当初はここまでの活躍を予測できませんでした。体も目立った感じがなく「2歳世代の1頭」というのが正直な感想でした。ですが、新馬戦の1週前追い切りから徐々に“この馬は走る”と思い始めました。調教時計は出るし、動きも良く、追い切りにまたがった豊くんも「走りますよ」と言ってくれました。小倉の新馬戦なら楽勝するだろう。そう思うほどになっていました。 続くアイビーSも勝てると手応えがありました。ただ、東京へ行き、装鞍(そうあん)所で馬を見ると、おなかがポコンとしていて太いな…と。オッズを見ると2番人気。新馬戦も首差と差のない勝利でしたし、少し不安になりました。「勝てないのでは…」。そんな中で見せてくれた強い勝ち方-。 「ドウデュースは走る」 確信した瞬間でした。(つづく) ◆友道康夫(ともみち・やすお)1963年(昭38)8月11日、兵庫県生まれ。89年から栗東・浅見国一厩舎で厩務員、調教助手を務め、96年から松田国英厩舎。01年に調教師免許取得し02年開業。JRA通算5148戦758勝(16日現在)。JRA・G1は先週の朝日杯FS(アドマイヤズーム)など22勝。日本ダービー3勝(16年マカヒキ、18年ワグネリアン、22年ドウデュース)は現役調教師で単独トップ。歴代でも2位タイ。