変わりゆく道後温泉 「老舗旅館の経営権譲渡」「屋号変更」…伝統と革新が織りなす温泉街の未来
インバウンド需要に応える 進化する「おもてなし」
道後温泉では、別のホテルでも大きな変化があった。 和・洋・中、70品の多彩な料理が並ぶ「バイキング」が人気という「道後彩朝楽」が、「大江戸温泉物語 道後」として生まれ変わったのだ。 元々、低価格を売りに全国展開する関西の『湯快リゾート』が2014年に買収し運営していたこのホテル。しかし、長引く物価高による節約志向や旅行控えなどを受け、湯快リゾートと関東の「大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ」はこの春、経営統合。 さらなる集客力アップを目指し、より認知度の高い「大江戸温泉物語」にホテルのブランド名を統一することになったのだ。 大江戸温泉物語 道後の疋田晃三支配人は、「これからはやはり外需ということで、インバウンド顧客を取り込むために、そういった統合することによって幅広くお客様を拾っていけるのではないかなと考えております」と語る。 実際、道後温泉を訪れる外国人観光客は急増している。プサン便の就航やソウル便の増便など、韓国路線が中四国最多の週20便を数える松山空港。さらに台北便も再開した。 観光庁の統計によると、2023年7月の1カ月間に愛媛に宿泊した韓国人観光客は3300人余りだったが、2024年7月はなんと約1万5000人と4.5倍に。台湾からの観光客も、2023年7月の3000人ほどから2024年7月には6500人余りと、2倍以上に増加している。 疋田支配人は、「コロナ前まではだいたい(1か月に)600人から800人ぐらいの台湾からのお客様でしたが、2024年に入って1200人から1500名まで増えております」と述べ、特に台湾からの宿泊客が増えていることを明かした。 この変化に対応するため、ホテルでは80部屋の客室のうち約6割を占める和室の一部を、外国人向けにベッドが置ける和洋室に改装する方針だ。さらに、外国人観光客の細かなニーズにも注目している。 さらに疋田支配人は「インバウンドのお客様は意外に客室にこだわりがありまして、一部屋一部屋の客室の作りだとか、これをしっかりデータ化している」と語る。外国人観光客は部屋の間取りやトイレの広さ、風呂の床の材質など細かいところをチェックしてホテルを選ぶ傾向が強く、部屋の雰囲気がわかるよう写真付きの詳細なデータを旅行会社と共有しているという。 疋田支配人は「言葉でなかなか伝わらない部分がありますので、インバウンドのお客様に対する表示だったり、そういったものをしっかり作り上げて、インバウンドのお客様でも使いやすい施設を目指してまいります」と意気込む。