父親の世話のため50代で介護離職した74歳おひとりさま女性。相続した8,000万円はいつの間にか宗教団体に…10年後に姪が目にした「まさかの光景」【相続の専門家が解説】
残すと言った財産を勝手に売ってしまった
父親の相続後、10年以上が経ち、2人の姪は自分たちの生活や子育てで手いっぱいの時期ですから、伯母にあたる光子さんとの交流を持てずにいました。光子さんからも二人にはとくに連絡などもなかったといいます。父親が光子さんの賃貸の連帯保証人になっていることも聞いていなかったため、9か月も家賃を滞納しているということで父親に家賃を支払うようにという請求書が届いたため、驚いて問い合わせをしてこられたという事情でした。 姪にすれば、祖父の相続時には光子さんの介護の貢献度を評価して、また、光子さんが財産は二人に遺すからという話もしていたことから、遺留分請求もせずに光子さんに譲ったのでした。けれども残るはずの不動産がなくなり、それどころか家賃滞納の借金まで請求されるという現実には愕然とするばかり。 感覚的には、「不動産は共有となっていて光子さん1人が自由にできないはず」と思っていたといい、「なぜ、勝手に売却できたのだろうか?」と思ったといいます。
遺言書では不動産は単独に指定されていた
遺言書では亡くなった父親の不動産は、光子さんが単独で相続するという内容になっていました。よって、遺言書によって、父親から光子さんの名義に相続登記することができたのです。 その後、光子さん名義の不動産は、光子さんが単独で売却し、売れたお金で次の区分マンションを購入したときも光子さんの単独名義ですから、その売却も光子さん単独で決断、手続きができたということになります。
おひとりさまは狙われやすい?
光子さんのように、配偶者、子どもがいないおひとりさまの場合、光子さん一人の決断や判断で物事が進んでいきます。今回の光子さんのように、もうマンションも売り払い、お金も使い果たして、家賃も払えないという状況になってからでは取り返しがつかないと言えるでしょう。父親の相続の段階で、おひとりさまの光子さんと姪たちの間で、財産について、方向性や将来像をすり合わせておく必要があったと言えます。 この光子さんの例から、身内と疎遠になっているうちに、宗教などの他人が入り込み、過度の寄付などから、残るはずだった財産を失う可能性があることを、これからのおひとりさまも教訓にしていく必要があるでしょう。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子
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