遺族年金の「遺族厚生年金」とは?|遺族厚生年金の計算方法、受給条件、 手続きの流れを解説【シン・会社のマナー】
年金は、年をとったときにもらえる老齢年金だけではありません。遺族年金は、一家の働き手や年金を受けとっている人が亡くなったとき、家族に給付される年金です。実際に家族が亡くなったときに、遺族年金について何をしたらいいかわからないという人も多いのではないでしょうか。 写真はこちらから→遺族年金の「遺族厚生年金」とは?|遺族厚生年金の計算方法、受給条件、 手続きの流れを解説【シン・会社のマナー】 遺族年金には、国民年金の遺族基礎年金と厚生年金の遺族厚生年金がありますが、今回は、遺族厚生年金を中心に人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。
遺族厚生年金の全体像を理解する
遺族年金の仕組みは、複雑でわかりづらい制度です。まずは、遺族厚生年金の基本について見ていくことにしましょう。 ◆遺族厚生年金とは何か 厚生年金は、「労働者の老齢、障害、又は死亡に関して保険給付を行なう」と定められています。国民年金の対象者は国民ですが、厚生年金の対象者は「労働者」です。つまり、適用事業所に雇用されていたことのある人が受けられる年金です。この場合の「障害、又は死亡」というのは、業務災害であるかどうかは問われません。 遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者、または被保険者であった人が亡くなったとき、その人によって生計を維持していた家族に給付される年金ということになります。 ◆遺族厚生年金の目的と役割 遺族厚生年金は、亡くなった人の遺族の所得補償を目的としています。国民年金の遺族基礎年金の2階部分として支給されることもありますが、対象となる遺族の範囲や条件が異なるため、遺族厚生年金のみを受け取る場合も多くあります。遺族の年齢などに配慮して、生活に窮することのないように制度設計がなされています。
遺族厚生年金の受給対象者と支給条件
遺族基礎年金を受給できるのは、一定の条件を満たした子と子のある配偶者だけです。遺族厚生年金の受給者の範囲は、遺族基礎年金より広くなっていますが、様々な条件が設けられているので確認していきましょう。 ◆受給対象者の範囲 遺族厚生年金は、次に挙げる遺族が対象になります。しかし、受給には優先順位があり、最も先順位の遺族のみが受給者になります。 第1順位 子のある配偶者、子 子のない妻、子のない55歳以上の夫 第2順位 父母 第3順位 孫 第4順位 祖父母 このうち、子と孫については18歳に達した年度の3月31日まで。または、20歳未満で障害等級1級また2級であることが条件になります。また、子のない30歳未満の妻は、5年間のみしか受給できません。子のない夫と父母と祖父母は、55歳以上なら受給権がありますが、支給は60歳からになります。 ◆遺族厚生年金の支給条件 遺族厚生年金が支給されるためには、亡くなった人が次のいずれかの要件を満たしている必要があります。 (1) 厚生年金の被保険者が死亡したとき (2) 厚生年金の被保険者であった期間に初診日のある傷病で初診後5年以内に死亡したとき (3)1級・2級の障害厚生年金の受給者が死亡したとき (4) 老齢厚生年金の受給者が死亡したとき (5) 老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき (4)(5)の場合は、保険料納付期間や保険料免除期間を合わせて25年間以上あることが条件になります。 これらの要件は、(1)(2)(3)を短期要件、(4)(5)は長期要件と呼ばれています。短期要件の場合は被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間があわせて3分の2以上あるなどの保険料納付要件があります。