インターネット上の健康・医療情報の見極め方
まず確認したい五つのポイント
インターネット上の健康や医療に関する情報は、まかり間違えば健康にわるい影響を及ぼしかねません。入ってくる情報をそのままうのみにするのではなく、正確な情報か、信用できる情報かを自分で判断できるようになりたいものです。 そのために普段から心掛けたいこととして、聖路加国際大学の研究グループが開発した「いなかもち」を紹介します。ここで「いなかもち」とは餅の種類ではなく、「い」「な」「か」「も」「ち」の五つをチェックする、という意味です。「いなかもち」の順序を変えると「かちもない」になりますので、「いなかもち」が確認できないような情報は「価値もない」と覚えておくとよいかもしれません(1)。 まず「い」は「いつ」、つまりその情報がいつのものなのかを確認する、という意味です。医学の進歩は日進月歩ですので、昔は広く行われていた治療法が今では廃れてしまった、ということもあり得ます。そのため、最新の情報であるかを確認することはとても重要です。書籍や雑誌なら奥付に出版年が書かれていますが、インターネット上の記載には、いつの情報かが書かれていないことも少なくありません。 「な」は、その情報が「何のため」に書かれたかを確認します。健康や医療に関する情報の目的は、多くの人に知ってもらうことですが、中には特定の商品の宣伝(購入サイトに誘導するため)もあります。インターネット上の記載は、宣伝かそうでないかが判別しにくい場合もありますので注意しましょう。 「か」は「書いた人」で、情報を提供・発信している人や組織を確認します。書籍や雑誌であれば執筆者や出版社、インターネットのホームページであれば運営している人や組織・団体などが「書いた人」にあたります。X(エックス=旧ツイッター)などのソーシャルメディアでは、発信者が匿名(ニックネーム)の場合、書いた人が誰か分かりません。 「も」は「元ネタ」を指し、情報の根拠のことを指します。単なる憶測や個人の意見なのか、何らかの研究に基づいているのか、政府や学会など公的機関からの発信なのかなどを確認します。 最後の「ち」では、違う情報と比べたかを確認します。一つの情報だけに頼るのではなく、複数の情報を照らし合わせて比較することにより、その情報が信用できそうか、それともちょっと怪しそうかが見えてきます。日ごろからこの「いなかもち」を意識して、情報を見極める力を高めましょう。 「いなかもち」をはじめとする教材は、聖路加国際大学図書館のウェブサイトで公開されており、無料で視聴できます。 【文献】 (1) 健康を決める力「インターネット上の保健医療情報の見方」 北澤京子(きたざわ きょうこ) 医療ジャーナリスト 京都薬科大学非常勤講師 *『月刊糖尿病ライフさかえ 2023年11月号』「賢く付き合おう! 健康・医療情報」より