衆院選 消えた投票所入場券 沼津・今沢、松長地区に集中 市選管、詳細調査へ 苦情は500件超
27日に投開票された衆院選で、沼津市の一部地域に投票所入場券が届いていなかったことが30日、明らかになった。市選挙管理委員会によると、苦情などの電話が500件超に上り、有権者への入場券未着はJR片浜駅近くの松長集会所が投票所の今沢、松長の両地区に集中したとみられる。地元関係者によると、今沢地区だけで少なくとも十数世帯に届いていなかったとされる。市選管が詳細な経緯や原因を調べる。 市役所で30日に記者会見した池谷志津子市選管事務局長によると、両地区への入場券は沼津郵便局に19日に持ち込んだ。23日までに全世帯への配達が完了するように依頼し、同郵便局が引き受けた。届かなかった原因は調査中だが、市選管は「入場券は選挙の最大の啓発にもなる。申し訳なく思っている」と謝罪した。 日本郵便東海支社広報課の陶山能志係長は「引き受けた数は適切に配達した」とし、18日から20日までの間に引き受けた8万7162通分は適切に発送したと説明した。一方、市選管によると、配達完了後の24日以降、松長集会所で投票を予定する有権者から「届いていない」との電話が複数あり、状況確認を進めた。沼津郵便局は「配達は完了している」と答えたという。 日本郵便の陶山係長は市選管との確認段階で「依頼を受けた通数と、市選管が持ちんだ通数が乖離(かいり)していたので、『依頼の数と合わなければ引き受けができない』と伝えたところ、その場で(市選管側が)数を修正した」とのいきさつがあったと明らかにした。市選管は3日間の依頼件数が全て間違っていたため、修正したという。その上で「3日間で8万7162通分を依頼したことは間違いない。依頼が漏れたとは考えにくい」と適切に処理したことを強調した。 松長集会所の有権者数は3222人で今回の投票率は48・79%。前回選は47・86%で、市選管は「(未配達の)大きな影響は出ていない思う」とみる。当日投票所に訪れた1079人のうち、219人が入場券再交付を希望した。 ■入場券届かず、投票断念の人も 投票所入場券が沼津市の今沢、松長地区の一部地域に配達されていなかった問題で、両地区の有権者の中には入場券を受け取ることができず、投票を断念した人も見られた。投票は入場券がなくても身分を証明する物があれば可能だが、今沢地区の有権者は「知っている人は少ない。どこに入場券があるのか。個人情報もあるのに」。地元からは厳しい声が聞かれた。 投票日になっても自宅に入場券が届かず、投票を諦めたという今沢地区の50代女性会社員。投票日までに市選管や沼津郵便局に問い合わせたが、結局、配達されなかった。住所や家族構成などの個人情報が記入されていることから不安を抱いた女性は28日、両者に入場券の行方を再度尋ねたが「分からない」との回答。「入場券が届いていたら選挙に行くつもりだった。本当に無責任」と憤り、「管理体制を見直すべき」と指摘した。 同じく入場券が届いていないという50代男性会社員の自宅に25日午後、「誤配やその他がないか確認している」と郵便局員を名乗る女性が突然訪れた。不審に思った男性が追及したところ、「システムが変わって一軒一軒回っている」と説明したという。未配達との関係は不明だが、男性は「この地区に入場券が未配達という事実を早く公表すべきだった」と強調した。
静岡新聞社