G-FREAK-FACTORY 茂木洋晃が語る、乱世におけるロックの役割
山人音楽祭への決意
―ここから先の活動、メッセージが楽しみです。さて、G-FREAK-FACTORYが主催する『山人音楽祭』が今年も開催されますね。それこそコロナ禍でも開催し続けていたんですよね。 群馬という田舎のフェスなんで、クラスターを出したりとか下手こけば村を追われるかもしれない……そんな中での開催でしたね。 ―逆にそれでも開催した山人音楽祭への決意とはどんなものだったんですか? あの時期の開催は、ある意味すごいギャンブルだと思いましたね。やるってだけで、「なんてことやってくれてんの?」って言う人もたくさんいましたし。そんな中でなぜやったのかというと、シンプルに絶対に消したくないと思ったからです。ここで止まったら自分がやってきたことごと消えちゃうなって思って。あの時、人が人を疑うのが普通だったじゃないですか。人を信じるということをどんどん削がれていった。けど、フェスは俺たちが来てくれる人を信じられて、来てくれる人たちが演者を信じていれば成立すると思ったんです。このギャンブルはすごく怖かったけど、結果、事なきを得ました。会場も移して規模を小さくしたり、声出し禁止にしたり、できることはやりましたし。コロナ前は3ステージでやっていたんで、今年は戻したいですね。それを目標に2024年は始まったんです。コロナ前を狙ってたんじゃそれ以上にはならないかもしれないけど、一旦落ち着いて、そこに頑張って戻していくチャレンジをしようっていう気持ちです。 ―なるほど。3つステージを作るというチャレンジ以外に、2024年ならではのメッセージやテーマはありますか? 群馬県も、アフターコロナで、逆にフェスがいっぱい増えたんですよ。Gメッセという新しい会場もできて、毎週音楽イベント、フェスをやってる。その中で、やっぱりもう一回ローカルというところに狙いと焦点を合わせたいです。 ―そこは大事ですよね。地方のフェスも、会場が地方なだけで、出演者も含めて、ショッピングモール状態です。例えば、地方の個性的で神秘的なお祭りも観光客に媚びを売り、集客に走った途端に、その祭りが持っていた魅力・パワーを失います。音楽フェスも町おこしっていう面では、外から人が来てもらわなきゃ困る。で、このせめぎ合いはかなり難しいだろうなって思ってます。 山人音楽祭の動員の6割強が、群馬県民なんすよ。そこがすごくいいなと思っていて。普段ライブハウスに足を運んでもらうことが、もちろん俺たちの目的でもあるんですけど。普段ライブハウスには行かないけど、このフェスだったら行くっていう群馬県民の人たちがすごく多いんです。だから、外から来た人の方が多くなったらもうやらなくいいかなと思ってます。そのほうが興行的には成立するけど、そんなことを群馬でやる必要はないと思うし。群馬の人の「嬉しい」っていう声が、どんどんどんどん濃くなるほうがいいなと思って。広がるというより、濃くなっていく方が俺は好きなんで。そうやっていけば、勝手に着色されて、こっちから「こうしてくれ」って言うこともなく、勝手に湧き上がっていくんじゃないかなって思うんです。甘いっすかね(笑)。そんなふうに俺は思ってんすけどね。 ―むしろ、そんな山人音楽祭こそ楽しみです。最後の質問です。パンデミックがあったり、世界では戦争が2つもあり、アルバム『HAZE』の曲に出てくる言葉を使えば今は〈乱世〉です。そんな乱世におけるロックの役割をどう考えますか? ロックって抽象的で、捉え方がみんな各々違うと思うんです。バンドの数だけ、もしかしたらメンバーの数だけ、人の数だけ捉え方が違う。だけど、「俺のロックの定義はこうだ」っていうのが、俺は大事だと思います。各々、人の数だけロックがあっていい。今、アメリカの音楽のチャートは100位以内はヒップホップとシンガーソングライターじゃないですか。本当に、バンドというものが古いものになってるっていうのを、いろんな人から言われるんです。まだバンドとかやってんの?って(笑)。でも、俺はバンドをやるってことを全く疑ってないんですよ。不安も心配もない。バンド以外に何やるの?って思う。先日、BRAHMANとLOW IQ 01と静岡で一緒だったんですよ。そこにJACKIE & THE CEDRICSもいて、なんだ?このメンツみたいな(笑)。朝方帰ってきて、混じりっけがなくて本当に楽しかったなぁって思ったんですよ。それがすごくロックだなと思えた。ロックで政治をひっくり返そうとか、そんなことより、目の前の人をどれだけ高揚させるかってことだと思うから。もちろん地方に住んでいると、問題は山積みだし、あり得ないことが起こりがちなんですよ。逮捕者もバンバン出てるし。でも、権力側とかにすりよろうとはまったく思わない。俺の中のロックは、全然そうはならないから。やすやすと、そういうところにすり寄っていくバンドとかには、もう何の興味もない。そういうアティチュードなんだなって思うだけで。そこにも彼らの正義はあるかもしれない、俺はもう付き合うことはないけど。それがお前のロックだったら、それでいいよって思うだけで。年を取ったなと思いますね(笑)。だってそんなこと構ってる暇ねえもん。それより、自分が考える最高のやつと、最高の夜を過ごせてれば、勝手に動員も増えるし。 俺らが疑問を感じながらやってたら動員なんか増えないし、音源なんか広がらない。自分が考えたメッセージなんか届くわけないんだなって思ってるから。そこは思いっきり割り切りましたね。 ―なるほどね。とにかくアルバム本当に素晴らしかったので。そういえば、茂木さんも行っていましたが、僕も最近また能登に行ったので、そういうサポートのイベントとかでもご一緒できたらと思っています。 よろしくお願いします。群馬でホッカイロを集めたらすぐ7万7000枚集まったんです。地元のやつらが持ってけって言ってくれて、2トン車とハイエースをパンパンにして持って行ったんですよ。これだけあれば来年の冬も大丈夫だろうって。もうそういう時代になりましたよね。 『HAZE』 G-FREAK FACTORY 発売中 「山人音楽祭 2024」 9月21日(土・祝)・22日(日・祝) 日本トーターグリーンドーム前橋
Joe Yokomizo