【住宅ローン専門家が対談】ズバリ注目の商品、団信や返済プランを選ぶ際の重要なポイントは?(後編)
住宅ローンは変動、固定、ミックスプランどれがお得なのか
――住宅ローンを変動金利か全期間固定金利かで決めあぐねている人は、ミックスプランを選ぶのも一つの手だと思うのですが、お二人はどのようにお考えでしょうか? 千日 住宅ローンをミックスプランで返済するのは反対です。ミックスプランとは異なる2つの金利タイプを組み合わせる方法ですが、そもそも不動産と借り入れは不可分なもの。1つの不動産に対してタイプの違うリスクを2つ組み合わせるのは、その後の判断を複雑にするだけだと思っています。 まず、金利情勢が変わった時に良しあしが直感的に判断しにくい。繰り上げ返済や借り換えを考慮する際にも、計算が複雑になってしまいます。また、私が常々言っているのが物件のポリシーです。たとえば、注文住宅を購入する場合は基本的には最後まで住宅ローンを借り続けるので、固定金利が物件のポリシーと合致します。 一方で、変動金利は売却なども視野に入れている人に向いている金利タイプです。やはり、物件のポリシーに適した金利タイプを選択することが大切だと思います。 淡河 僕はミックスプランに大賛成なんですよ。理由は単純で、変動金利か全期間固定金利かで悩んでいるなら、ミックスすればいいじゃんと思っているからです。 昨今の金利上昇局面において、最優先で考えるべきは金利上昇リスクです。金利上昇リスクをゼロにしたいなら全期間固定金利にすべきだし、多少のリスクを負ってでも今の低金利の恩恵を受けたいなら変動金利にすべきです。 ただ、実際問題、金利上昇リスクがどの程度あるのかは誰にもわかりません。だったら、自分が取れるリスクの大きさに応じて変動金利のポーションを変えていけばいい。要はリスクコントロールですね。全期間固定金利8:変動金利2くらいの割合がベストだと思います。 千日 全期間固定が8割なら、それはもう全期間固定金利じゃないですか? 淡河 そもそも大前提として、住宅ローンを変動金利と全期間固定金利のどちらを選べばいいかわからないような状況において、僕は全期間固定金利一択だと思っています。物価上昇局面において、物価上昇率以下の全期間固定金利は非常にお得なので。 でもこれって、結局は感情の問題なんです。私のところに住宅ローンの相談に来る人も、ほとんどが目先の変動金利の安さに飛びついちゃう。むしろ、変動金利にしないともったいないとさえ思っています。だからといって、変動金利はリスクの取りすぎだから、おいそれとは勧められません。 また、変動金利に秘められた見えないコストを軽視している人があまりに多すぎます。よくあるのが、変動金利で住宅ローンを借りたいというからよくよく話を聞いてみたら、フリーキャッシュフロー(生活費やローンを支払った後に残る現金)が2万~3万円とかしかないというパターンです。そんなの、金利が2%上がるだけで、5年後とんでもないことになりますからね。危機感がなさすぎです。 たとえば、スウェーデンでは2020年11月に1.6%だった変動金利が、2024年3月には4.95%になったといいます。もっとすごいのがイギリスで、今の変動金利が7.8%。年間3000ポンド(約54万円)の負担増となっていて、月4万~5万円の支払い負担に耐えている人が数多くいるそうです。イギリスなんかは金利上昇とともに給料も上がっていますが、それでも大変なことに変わりはありません。日本で同じことが起こったら、もう大パニックですよ。でも、絶対にそうならないと断言できますか? という話なわけです。 千日 淡河さんの見立てでは、5年後に4%も十分にあり得るというお話でしたもんね…(前編から)。 淡河 加えて重要なのは、住宅ローンだけではなく家計全体の見通しです。住宅ローンの話になるとみんな負債の話ばかりしますが、もっと資産と負債とのバランスを考えなければいけません。 金利が上がるのは悪いことばかりではなく、実は資産サイドにとっては好影響なことも往々にしてあります。金利上昇局面では、企業業績向上への期待が高まって株価が上昇するかもしれませんからね。 千日 そうですね。もちろん逆もありますが。何にせよ、私も金融リテラシーの向上は必要不可欠だと思います。 >>前編はこちら
千日太郎,淡河範明