『豊原国周 生誕190年 歌舞伎を描く』静嘉堂@丸の内で “明治の写楽”が手掛けた役者絵にスポットを当て紹介
古美術や古典籍の名品で名高い静嘉堂文庫美術館はまた、コレクションの礎を築いた三菱二代社長・岩﨑彌之助の夫人・早苗が収集した浮世絵版画も多く収蔵している。そのなかでも、生誕190年を迎える豊原国周(とよはら くにちか)に注目しつつ、役者絵に焦点をあてた展覧会が、2025年1月25日(土)から3月23日(日)まで、東京・丸の内の静嘉堂@丸の内で開催される。 【全ての画像】三代豊国(国貞)《五斗兵衛盛次 中村歌右衛門 三世梅玉》ほか広報用画像(全8枚) 静嘉堂の浮世絵コレクションの特徴のひとつは、初期浮世絵から明治の浮世絵までの役者絵の歴史を、鳥居派から勝川派、そして歌川派に至る作品群でたどれること。静嘉堂のコレクションだけで、歌舞伎を描いた絵の通史を追えるのが大きな見どころである。そしてもうひとつの特徴は、そのコレクションが「錦絵帖」のかたちで大切に愛玩されてきたため、外光にあまりふれることなく、今摺られたかのような保存状態の良さを保っていることだという。 静嘉堂でまとまったかたちで浮世絵が公開されたのは、2018年の歌川国貞のコレクション。美しい色彩の美人画と役者絵が並んだこの展観も高い評価を得たが、今回の展覧会で特に注目されているのは、その国貞の弟子の豊原国周に光があてられていること。国周が生きた幕末・明治は、多色摺の木版技術が最高潮に達した時期であると同時に、浮世絵の円熟期でもあり、歌舞伎界では團十郎、菊五郎、左團次が活躍した「團菊左」の時代だった。 人物の胸から上を捉えたブロマイド的な「大首絵」で役者の一瞬の表情を的確にとらえた国周はまた、名場面を舞台とした役者の似顔を大判三枚続のワイドスクリーンでダイナミックに描き出し、「明治の写楽」とも称されたという。同展では、その国周の迫力ある作品と、師の国貞が贅を尽くして描いた作品との比較も楽しむことができる。 もうひとつ注目したいのは、国貞でなければ描けない密画の肉筆画帖《芝居町 新吉原 風俗絵鑑(ふうぞくえかがみ)》が展示されること。江戸の二大歓楽街である芝居町と新吉原の情景を6図ずつ、合計12図としたこの大画面のアルバムから、今回は芝居町の全6図が通期展示される。歌舞伎小屋での一日の魅力あふれる情景と役者絵のバリエーションを網羅したこの画帖は、「役者絵の神髄」とも言える必見の作。 また同展では、2025年のNHK大河ドラマで注目される江戸時代の版元・蔦屋重三郎に関わる展示もある。歌麿とその弟子たち、そして写楽周辺の絵師の作品が並ぶのも楽しみだ。 <開催概要> 『豊原国周 生誕190年 歌舞伎を描くー秘蔵の浮世絵初公開!』 会期:2025年1月25日(土)~3月23日(日) ※前後期で浮世絵版画は総入れ替え(前期は2月24日まで、後期は2月26日(水)から) 会場:静嘉堂@丸の内