「神様のおかげでこの会社に」OB訪問で出会った信者…「一歩間違ったら誰でも」新興宗教勧誘の罠
脱会を決めてからが暗黒期の始まりだった…
そんな平田さんだが、11ヵ月で脱会できたのはなぜなのか。 「家族がすごく良い人で、私をずっと支えてくれたからです。 双子の姉はパワフルで、集会場所に殴り込むくらいの勢いで一緒に集会に参加したことがあって、そこですさまじい姉妹ゲンカをしたら、周りに距離を置かれました(笑)。 でも、お姉ちゃんが私をそこまで守ろうとしてくれているんだと感じたら、居場所があると思えたんですね。 それに、母親はカトリックの幼稚園で働いていて、私もプロテスタントの学校に6年間いたので、セカンドオピニオンのような形でプロテスタントの牧師さんのところに意見を聞きに行くように勧められました。 当時の私からしたら、カトリックとかプロテスタントのほうがサタンだと思っていたので、怖かったですけどね」 かくして11ヵ月という短期間で脱会できたわけだが、実は脱会を決めてからが暗黒期の始まりだったと振り返る。 「強迫性障害のような症状が出て…。 宗教を抜けるというのは、神様を疑うってことじゃないですか。 そしたら、電柱が落ちてきて私が火傷するんじゃないかと思って、空を見て歩けなくなったり、全てのものが怖くなったりして。 プロテスタントの牧師さんから『神様は愛の人なのに、その信者以外をサタンってみなすのはおかしくない?』って言われたんですよ。『汝の隣人を愛せよと習ったでしょ』と。 それで牧師さんも家族も励ましてくれて、父親なんて電車に怖くて乗れなかった私のことを大学まで送り迎えしてくれ、お母さんはカウンセラーみたいに話を聞いてくれて、徐々に乗り越えて自分の生活を取り戻していきました」 とはいえ、個人の脱会だけでも大変なのに、映画を撮るとなると、危険な目に遭ったのでは。 「取材、撮影を通して危険な目に遭ったことはないです。私のことは叩けないんですよ。私がTwitter(現X)で散々言っているのは、私は特定の宗教を参考にしているわけじゃないのに、これで叩いたら逆にあなたの宗教が公式で虐待を認めていることになるよ、ということ。 DMでも『信仰の自由を否定するな』とかすごくたくさん来るので、1人1人に返信するんです。アンチの中には、意見が言えないから直接危害を加えようとする人もいるじゃないですか。だったら正面で戦ってやる、説得してやると思って。私は正しいことをしているんだから」 全部に返信していたら、やりとりが永遠に終わらない気もするが。 「永遠に終わらないですよ。ただ、私はどこの宗教も否定していないし、信仰の自由を否定していないし、なんなら私自身が現役のプロテスタントだけど、私は宗教虐待を否定しているだけだと伝えています。 それでも、『勘違いする人もいる』みたいなことも言われるので、1件1件丁寧にお答えしていくのが誠実な対応だと思ってDMを開放しているんです。 丁寧に対応していくと、アンチってファンにもなるんですよ。ちょっとメンタル病みますけど(苦笑)」 この強気の戦い方には、誰かのアドバイスがあったのだろうか。 「いいえ、誰にも教えてもらわず、自分で考えたものです。自分の命を守れるのは自分だけだと思っているから。 それに、馬鹿とか死ねとかには返信しませんが、私の映画で傷つけてしまっていることに対しては、責任を持たなきゃいけないと思っているから。そういうことを積み重ねていかないと、22歳で監督になんてなれないですよね。 あまちゃんだとは、よく言われますけど(笑)。 1回人生のどん底に追い込まれた人は、戦い方を身につけてから帰ってくるというのは、自分の経験から得た持論で。それに、1回大事なものを失った人、メンタルを壊した人って、治し方を知っているんですよね」