燭台、高坏…廃棄仏具がアーティストの手で「輪廻」 海外へアート作品として再販売
核家族化の進展など生活形態の変化を背景に、昔ながらの大きな仏壇のある住宅が減る中、岡山市北区の仏壇仏具店「照泰仏堂」が、廃棄される予定の燭台(しょくだい)や高坏(たかつき)などさまざまな仏具を、芸術家の手でアート作品に生まれ変わらせて海外で販売するプロジェクトに取り組んでいる。10月には同市内で初めての展示販売会を開催。同店の幡司剛成(はたし・たかのり)社長(47)は「再生することで仏具への関心が高まり、ご先祖さまに手を合わせることの大切さを再認識してもらえたら」と話している。 【写真】メヘンディの技法を用いて制作された作品。中央右の高坏に金魚が描かれている ■イメージを一新 金魚が泳ぐ朱色の高坏に、色とりどりのドットが描かれたおりんなど、仏具のイメージを一新する作品がずらりと並ぶ。 10月下旬に照泰仏堂と関連会社の「tsunamusu」が開催した展示販売会。その名も「RinNe(輪廻(りんね)) 生まれ変わる仏具たち」。趣旨に賛同した岡山県内の芸術家13人と、ハンディキャップアーティストがいる障害福祉サービス提供企業1社が、仏具を再生した置物やアクセサリーなど約200点を出品。出品者の中には女子中学生も含まれていた。 出品者のひとり、Ayanoさんは、メヘンディ(ヘナアート)というボディーペインティングの芸術家で、ヘナという植物のペーストで肌に繊細な絵を描く。その技法を用いて、燭台や高坏にアクリル絵の具で金魚や鳥、チョウなどの絵を描いた。「仏具もメヘンディもインドにゆかりがある。朱色の高坏から金魚鉢をイメージして金魚を描いた。仏具は職人が心を込めてつくった芸術品で、廃棄はもったいない」とAyanoさん。 インテリア用に朱色や白で着色した香炉などを出品したmirokuさんは「外国人の日本への興味は強まっているが、一般家庭の仏具はまだ知られていないので喜ばれると思う」と話した。 幡司社長は「芸術家には廃棄される運命の仏具に新しい命を吹き込むところに興味を持っていただいた」と意義を強調。「同じ仏具を題材にしても、アーティストによって『かわいい』『かっこいい』など、印象が全く異なる作品になる」と仏具アートの魅力を語る。 会場で作品に見入っていた岡山県倉敷市の保育士、真鍋順子さんは「仏具は亡くなった方のイメージ、負や陰の印象を帯びているが、作品からは明るい陽の浄土のイメージが伝わってきた。新しい命が吹き込まれた感じだ」と感想を述べた。