ANA、京セラにSAF証書。普及促進、フォワーダーと連携
全日本空輸(ANA)は8日、電子部品大手の京セラに、SAF(持続可能な航空燃料)の利用で削減できたCO2(二酸化炭素)排出量を示すCO2削減証書(SAF証書)を発行すると発表した。航空会社が荷主に直接、SAF証書を発行する分かりやすい仕組みを通じ、SAFの普及に弾みをつける。京セラから航空輸送を請け負うNIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)傘下の日本通運、近鉄エクスプレスと仕組みを整えた。
ANAが荷主企業にSAF証書を発行するのは初めて。8日、成田空港でANAの成田発・米シカゴ行き貨物便に京セラの貨物が搭載される様子を公開した。
京セラは今回、トライアルの形でANAのプログラムに参画。半期で10トンのCO2をSAFで削減する契約を結んだ。
同日会見した京セラ貿易管理部責任者の西澤知一郎氏は、「当社グループ全体の排出量のコンマ数%に満たないが、トライアルを経て今後どのように活用していくか検討していきたい」と述べた。
京セラなどの荷主企業はSAF証書を統合報告書での報告や、国際機関への環境情報の開示に利用できる利点がある。自社の活動以外で間接排出されるCO2「スコープ3」の削減量を証明できるため、これが上場条件などに求められる大手を中心に利用価値が高い。
■航空会社発行で訴求
ただ、SAFで得られる環境価値に関心を示す企業はまだまだ少ない。
ANAは2021年からフォワーダー(FW)に証書を発行する仕組みを開始。フォワーダーも荷主に証書を発行してSAF利用を訴求してきたが、多くの企業の参加を得るに至っていない。
NXHDの定月啓一郎氏は、「日本でも顧客の認知度は上がっているが、京セラのようにすぐに購入という形にはなりづらい。一生懸命、啓発して広げている段階」と述べた。SAFは既存燃料よりも数倍のコストがかかるのが課題だが、それ以前に認知度がまだ低い。普及段階では、フォワーダーを介した証書の発行が荷主に響きづらい。