次世代型太陽電池の本命「ペロブスカイト太陽電池」がわかる。研究開発と産業化への現在地
積水化学が先行、素材メーカーの技術もカギ
ペロブスカイト太陽電池の製品供給に向けて、複数の国内メーカーがそれぞれの戦略で研究開発を進めている。その中で、積水化学工業は先行する一社だ。30cm幅のフィルム型ペロブスカイト太陽電池についてR2Rで製造するプロセスをすでに確立しており、25年の事業化を目指す。同年の大阪・関西万博に提供するほか、都内で建設中の超高層ビルに1メガワット分を供給する計画を持つ。同じくフィルム型では、東芝エネルギーシステムズなどが事業化を目指す。 一方、パナソニックホールディングス(HD)はガラス型での供給を目指す。建材ガラスに発電層を形成するプロセスで製造し、建材一体型太陽電池(BIPV)として、26年に試験販売を始める計画だ。また、アイシンは厚さ0.3mmの軽量ガラスを基板に用いることで、ガラス型ながら薄くて軽い太陽電池の実現を目指す。 このほか、ペロブスカイト太陽電池と同じく有機物を発電層に用いる色素増感太陽電池を事業化したリコー、シリコン太陽電池で実績のあるカネカ、京都大学発スタートアップのエネコートテクノロジーズなどが、それぞれ独自の技術を生かして事業化を目指している。 ペロブスカイト太陽電池の世界市場(『素材技術で産業化に挑む-ペロブスカイト太陽電池』より) 富士経済は、ペロブスカイト太陽電池の世界市場が40年に2兆4000億円に拡大すると予測している。その市場は積水化学やパナソニックといった完成品メーカーだけでなく、ペロブスカイト太陽電池を構成する部材を供給する素材メーカーや、それを設置・流通する企業にとっても商機になる。特に素材メーカーにはそれぞれが持つ技術によって、先に挙げた耐久性や大面積モジュールにおける高効率化という大きな課題の解決に向けた貢献が期待される。 ここで改めて、ペロブスカイト太陽電池の構成を紹介したい。フィルム型で見ていこう。大きく5つの層で構成する。透明電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、裏面電極だ。太陽光など光のエネルギーが透明電極側からペロブスカイト層に入ると、電子と正孔(ホール)が発生し、電子は電子輸送層、正孔は正孔輸送層を通り、電極にそれぞれ移動することで、電気を生み出す。これを、封止材やバリアフィルムを用いて封止することで、耐久性を高める。つまり、封止材やバリアフィルムの性能は、ペロブスカイト太陽電池の耐久性に影響する。そのほか、5つの層に用いるそれぞれの部材(電極材や電子輸送材、正孔輸送材など)は、変換効率や耐久性、成膜のしやすさに影響する。 ペロブスカイト太陽電池の事業化は、素材の製造やそれらを扱う技術によって課題を解決できるかがカギを握る。完成品メーカーはもちろん、素材メーカーにとっても、自社の技術を生かす舞台になる。