ポストグーグルグラスにソニーが乗り出すことの意義 ITビジネスアナリスト・大元隆志
2015年3月10日から、ソニーがスマートグラス(眼鏡型ウェアラブルデバイス)「スマートアイグラス」を発売します。対象者は一般消費者向けではなく、開発者向け、価格は10万円です。販売対象国は日本、アメリカ、イギリス、ドイツの4ヵ国。スマートアイグラス用のアプリ開発を促進するため、法人顧客に向けては、フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、オランダ、スウェーデンでも販売を開始します。一般消費者用には2016年内の提供を目標としています。
グーグルグラス
スマートグラスといえば、米グーグル社のグーグルグラスが有名です。しかし、このグーグルグラスは1月19日をもって「エクスプローラー・エディション」と呼ばれるソフトウエア開発者向けの初期モデルの発売を中止しました。グーグルグラス発表当初から内蔵カメラがプライバシーを侵害するとして、指摘を受けていました。個人向けの販売を一旦停止し、法人市場に向けての販売を継続するとのことです。 現在のウェアラブルデバイスのトレンドは、グーグルグラスが発表されたことによって火がつきました。グーグルグラスと同じジャンルのスマートアイグラスをソニーが発売する意義はあるのでしょうか? 少し、考えてみることにしましょう。
スマートグラスのビジネス機会
グーグルの決定から推測されるように、現在のところスマートグラスの個人向け市場は期待が先行しており、大きな物にはなっていません。話題性はあるものの、安い物でも5万円前後必要となるので、その価格を支払ってまで欲しいと考える消費者がいないのが大きな原因でしょう。 しかし、法人市場では実証実験レベルではあるものの、様々な実験が行われているのは事実です。例えば、米国のベンチャー企業Wearable Intelligenceはグーグルグラスを用いた高度な医療システムを開発しています。患者の顔を認識し、対応するカルテを表示し、適切な医療処置が行われたかをビデオで記録するといったようなことが既に実現出来ています。国内でも、オペラ劇場で外国語で話す演者のセリフを日本語に翻訳してスマートグラスに表示するという実証実験が行われています。 手を使わなくても、ITを利用出来ること、視界の前方にコンピュータの映像を表示させる(AR)ことで、現実世界に補足説明を付け加えられるため、様々な分野でビジネス利用の検討が行われています(参考記事)。 ですから、グーグルグラスが発売中止になったからといってスマートグラス市場の可能性が消えたわけではなく、ビジネス用途での開発競争については、むしろ盛り上がりさえ感じます。「IoT」ブームに乗って急成長する可能性もゼロではありません。