安倍路線転換の象徴、「選挙の顔」への期待が後押し-石破自民総裁
(ブルームバーグ): 自民党の石破茂元幹事長(67)が5回目の挑戦で、一度は諦めかけた総裁の座を手繰り寄せた。旧安倍派などの政治資金問題を受けた自民党への批判がくすぶる中、世論調査で人気の高い石破氏が「選挙の顔」として表舞台に躍り出た。
「38年の政治家生活の集大成と位置付け、最後の戦いとして全身全霊で挑む」。石破氏は10日に都内で開いた記者会見で、当選への意欲を示した。2021年の総裁選への出馬は断念して河野太郎デジタル相の支援に回ったが、安全保障環境の変化などを挙げ、再挑戦を決断したと説明した。
安倍晋三元首相が連続3期目を目指した18年の総裁選に挑戦し、敗れた。非主流派の代表的存在となり、菅義偉、岸田文雄両政権でも要職に就くことはなかった。石破氏の勝利は、路線転換で政治不信を払しょくし、状況を打開しようとする党員らの危機感の表れといえる。年内に想定される衆院選に向け、政権基盤の弱い石破氏が党内をまとめ上げることができるかが最初の課題だ。
経済財政運営の手腕は未知数
安全保障政策の論客として知られる。総裁選では日米地位協定の見直しや北大西洋条約機構(NATO)のアジア版といえる集団安全保障の枠組み作りも提唱した。地方創生にもこだわりがあり、東京一極集中の解消を重要な政策課題と位置付けている。
一方、経済財政政策の発信は少なく、その手腕は未知数だ。8月上旬に出版した著書では、日本銀行による異次元緩和の長期化で「国家財政と日銀財務が悪化した」と疑問を投げ掛けた。総裁選告示後のテレビ討論では「別にアベノミクスを否定するわけでもなんでもない。自分もその責任を負ってその検証はやらなければいけない、当たり前のことだ」と指摘するにとどめた。
税制を巡っては、金融所得課税の強化について「実行したい」と発言。ほかの候補者から批判を受けると、その後の記者会見で「所得が1億円を超えると税率が下がり始めるのは本当に正しいのかということを申し上げた」と軌道修正している。