国内版「ワーホリ」人口減に悩む自治体と若者つなぐ…地方移住「関心」都市部で35%、高まる熱に応えられるか
人口減に悩む自治体で、全国から若者らを受け入れ、一時的に働いてもらう国内版「ワーキングホリデー」が広がっている。地方への移住希望者は増えている一方、仕事や交通の便、人間関係など不安は大きい。各自治体は、実際の生活を知ってもらい、移住につなげたい考えだ。(徳島支局 山根彩花) 【図表】自治体のワーキングホリデー事業の例
なると金時収穫
11月上旬、北海道在住の国広誠さん(45)、祐香さん(49)夫妻は、徳島県鳴門市のホテル「アオアヲナルトリゾート」の売店で、徳島土産を陳列し、笑顔で接客にあたった。
移住先を探す夫妻は、鳴門市が実施する3週間のワーキングホリデー事業に参加。ホテルで勤務し、休日は市内を巡った。誠さんは「鳴門はご飯がおいしくて、雰囲気も良く、住みやすそう」と笑顔を見せた。
市は昨年5月、移住希望者に農業アルバイトを体験してもらう事業を開始。今年10月には、就業先にホテルを加えた。
1年半で計12回実施し、全国から延べ69人が参加。市の用意したシェアハウスに滞在し、農業では、地元の特産品「なると金時」やラッキョウの収穫作業などを行った。市内の働き手不足の解消にもつながっているという。
参加者の1人は鳴門市に移住。市の人口は10月末現在、5万3286人で、10年前から約7500人減っており、商工政策課の藤瀬蔵課長は「実際の生活のイメージを抱いてもらい、移住者を増やしたい」と話す。
「関心」35%
都市部の若者を中心に、地方への移住熱は高い。
昨年、認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京)に寄せられた移住相談は5万9276件。3年連続で過去最多を更新した。
国が昨年4月に公表した調査結果によると、東京圏に住む人の35・1%が「地方移住に関心がある」と回答。特に20歳代は44・8%に上った。理由は「自然豊かな環境」33・1%、「テレワークで地方でも働ける」22・6%などだった。
一方、移住の懸念材料は、「仕事や収入」が51・1%で最多。「買い物や公共交通の利便性」27%、「人間関係や地域コミュニティー」26・6%と続き、移住後の生活に不安を感じている実態が明らかになった。