人的ミスで消えた重要裁判の記録 弁護士「日本は遅れている」永久保存の記録廃棄も懲戒処分0件に警鐘【大分発】
記録の復元 「努力する」とした最高裁 1年経っても「検討中」
一方、求められているのが記録の復元だ。 最高裁は「困難」としつつも、2023年6月、工藤剣太さんの両親と面会した際、職員はできる限り努力する考えを伝えていた。しかし、それから1年以上が経過。工藤剣太さんの母・奈美さん は「説明が一切ない。こちらから電話でたずねても『検討中です』という言葉しか返って来ないところに誠意を感じない」と語った。 また、工藤剣太さんの父・英士さんは「このまま、うやむやにして終わってしまうのではないかという気持ちがある」と、最高裁の対応について不安を抱いていた。 最高裁は記録の復元が困難であることを踏まえて、「他の方策を内閣府や国立公文書館と検討している」としているが、テレビ大分の取材に対し「協議が継続中であるため、現時点でお伝えできることはありません」とコメントしている。
戦後何十年も変わっていない「紙」というシステム
今回の件について、大分県弁護士会所属の平松まゆき弁護士は次のように指摘している。 平松弁護士:裁判が長期化すると記録は本当に膨大になる。裁判所の棚、一列どころか一部屋使わないといけないぐらい。どうしてかというと昔ながらの紙で裁判をするからで、紙で色んなものを提出するというシステムが戦後何十年も変わっていない。 平松弁護士:隣の韓国は全て電子化。デジタルで行っていて証拠の提出から裁判そのものもリモートでやったりしている。私も実際、裁判を韓国で見たが、日本がいかに遅れているかを痛感した。今回の大分の裁判所の問題も、紙が増え続けるからこそ、どこかで整理していかないといけないという意識が働いたからだと思う。今後は日本も電子化を進めていくべき。とはいえ、デジタル化されてもヒューマンエラー、人為的ミスは起こってしまう。法曹界全体で再発防止に取り組んでいかないといけない。工藤さんの記録は絶対に失ってはいけない財産だったと思う。 国民の財産ともいえる重要な裁判の記録。どのように守り伝えていくのか。意識と仕組みの見直しが問われている。 (テレビ大分)