吉沢亮CM解約のアサヒビールが「不適切飲酒」対策に専門組織を設置しているワケ。変わる企業の「価値」
「ボリュームからバリューへ」アサヒビールの変化
2024年春に高アルコール商品の新規販売を終了することが報じられたあと、小売店や消費者からアサヒビールに対する反響は大きかったという。 「うちの場合、辞めるというよりスマートドリンキングに力を入れると捉えられていたんだと思います。(缶酎ハイなどが含まれる)RTD市場も、高アルコールセグメントから無糖に流行が変わってきていると感じます」(津田さん) 社内では当然議論はあったが、アサヒビールでは、スマドリを提唱し始めた頃から、「ボリュームからバリューへ」と、事業に対する向き合い方を変え始めていた。 例えば、酒税法の改正に伴い「新ジャンル」と呼ばれる商品群の値上がりは規定路線だ。社内では「本当にそこに注力すべきなのか」といった、現実的な議論が交わされているのだという。 今後100年先も生きていく企業になるために、何ができるのか。この重い命題を考えるには、商品の経済性はもちろんのこと、将来の社会的価値も捉えなければならない。 アサヒビールが提唱する「スマートドリンキング」自体、経済的価値と社会的価値の両立を視野に入れている取り組みだという。適正飲酒という社会的側面が強い活動が、どこまで企業にとってのバリューへとつながっていくのか。 社会課題解決型ビジネスが注目される現代の試金石になるかもしれない。 1月7日、アサヒビールはCM起用していた俳優の吉沢亮さんが2024年末に酒に酔ってマンションの隣室に無断で侵入していた問題で、CM契約を解除することを決定した。同社広報はBusiness Insider Japanの取材に対して「アルコール飲料会社として、今回の事実は容認できるものではないからです」と契約解除の理由を説明するが、上記のような「責任のある飲酒」を進めてきた経緯を知ると、今回の事件を看過できなかった理由がよく分かる。
三ツ村 崇志