吉沢亮CM解約のアサヒビールが「不適切飲酒」対策に専門組織を設置しているワケ。変わる企業の「価値」
「タバコのように規制されると厳しい」
レスドリ部では、産業医との連携を軸に、企業の健康経営のサポートや適正飲酒セミナーなど、まずはもともと力を入れていた取り組みのアクセルをさらに踏んでいく方針だ。 「回数や規模を大きくしたり。具体的な企業名は言えませんが、ある卸食品業界の企業では全社員向けのセミナーをやったり、別の企業では本社にお伺いして企業内セミナーやスマドリ体験会などを開催したりしています。」(津田さん) レスドリ部が進める責任のある飲酒に関する活動は、もともと社会貢献(CSR)的な側面が強い。一方、2020年から提唱してきたスマドリは、どちらかと言えばアサヒビールのマーケティング面から生まれた取り組みだと津田さんは説明する。 ただ、レスドリ部の活動を通じて、少なからずスマドリのビジネス面にもポジティブな影響を与えることができているという。 「『お酒をやめろ』と言うのは簡単ですが、答えがない中では、なかなかやめられない側面がありました。 マーケティング部門でも、ノンアルコールや低アルコール商品のラインナップを揃えています。それがまだ皆さん知られていない。(レスドリ部の活動では)そういったものをご紹介しています」(津田さん) 実際、アサヒビールはスマドリを提唱する中で、2030年までに主要な酒類商品(ビール類、RTD、ノンアルコール飲料)に占めるノンアルコール飲料・低アルコール飲料の販売量構成比20%以上を達成することを目標に掲げ、商品ラインナップの拡充を進めている。 もちろん、レスドリ部の活動の主眼は商品を売り込むことではなく、「飲酒に対する正しい知識を持った人を増やしていくこと」だ。とはいえ、企業活動である以上、事業利益への貢献のあり方はどうしても問われることでもある。上場企業であればなおさらだ。 その点、レスドリ部のKPIは、売り上げではなく厚生労働省のスコアにどの程度影響を与えられるかどうかだ。 「(厚生労働省では)生活習慣病のリスクを高める飲酒をしている人の割合を2032年までに男女合わせて10%にまで引き下げることを目標にしています。ここにいかに貢献していくかを目標にしています」(津田さん) ただこれも、見方を変えれば、将来の酒類業界への「投資」という位置づけとも言える。 「日本では感覚的にアルコールに対する規制はそこまで感じません。ただ、24時間購入できる状況や、飲みやすいアルコール度数の高い商品がある環境が問題だとされています。WHOからの指摘についても、特に欧米ではかなり危機感をもっています。タバコのように規制されてしまうと、業界としてかなり厳しい。 いい商品を作るだけでは十分ではなく、正しい選択をしてもらうような、そういう理解促進も合わせてやらないといけない」(津田さん)