『遠い空の向こうに』ロケット打ち上げに情熱を注ぐ、青春映画の佳作(後編)
公開後の反響
『遠い空の向こうに』は、製作費2,500万ドルに対し、興行成績は世界トータルで3,470万ドルだった。けっして良い数字とは言えないが、長く愛される作品となる。聖地巡礼のようにロケ地を巡るファンや、メイキング本(http://www.coalwoodwestvirginia.com/making_of_october_sky.htm)を自費出版したエキストラの人も現れた。 また映画化を記念して、「オクトーバー・スカイ・フェスティバル」(http://www.coalwoodwestvirginia.com/october_sky_festival.htm)が、映画の舞台である実際のコールウッドで毎年開催される。このイベントには、ホーマーが毎回参加した他、NASA宇宙飛行局のビル・レディ次長や、宇宙飛行士のトーマス・ジョーンズがゲストとして招かれる。スプートニク50周年となった2007年には、兄のジムを演じた俳優のスコット・トーマスも訪れている。 だが、コールウッドの人口減少は止まらず、地元のボランティア不足から、2011年開催された第13回大会で最後になると発表された。そこで、2012年から開催地がウェストバージニア州ベックリーに移され、ホーマーの他、ロイ・リー・クック、オデル・キャロル、ビリー・ローズ(劇中には登場しない)といった、本物のロケットボーイズも参加した。 ベックリーでは、2019年まで毎年開催され続けるが、2020年からはコロナで中止になる。そして2023年から、映画のロケが行われたテネシー州のオリバー・スプリングス(https://octoberskyfestivaltn.org/photo-gallery)で再開され、2024年も開催が予定されている。 【参考文献】 ホーマー・ヒッカム・ジュニア 著: 「ロケットボーイズ 上/下 (草思社文庫)」草思社 (2016) 佐藤 靖 著: 「NASA―宇宙開発の60年 (中公新書)」中央公論新社 (2014) 的川泰宣 著: 「月をめざした二人の科学者‐アポロとスプートニクの軌跡 (中公新書)」中央公論新社 (2000) 大沢弘之 監: 「日本ロケット物語 新版」誠文堂新光社 (2003) ナタリア・ホルト 著: 「ロケットガールの誕生: コンピューターになった女性たち」地人書館 (2018) 文:大口孝之(おおぐち たかゆき) 1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、女子美術大学専攻科、東京藝大大学院アニメーション専攻、日本電子専門学校などで非常勤講師。主要著書として、「3D世紀 -驚異! 立体映画の100年と映像新世紀-」ボーンデジタル、「裸眼3Dグラフィクス」朝倉書店、「コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション」フィルムアート社 (c)Photofest / Getty Images
大口孝之(おおぐち たかゆき)