対ユーロで近づく円最安値、マキタなど欧州関連銘柄には追い風も
(ブルームバーグ): 外国為替市場の円相場は対ユーロで170円台に下落し、ユーロ導入後の最安値に近づいている。欧州での稼ぎが大きい企業にとっては、現在の為替水準が業績への追い風になる可能性もある。
円は29日、対ユーロで170円台後半で推移し、対ポンドでは一時200円66銭と、2008年8月以来の安値を付けるなど、対ドル以外でも円安が進行している。
ブルームバーグのデータを基に、時価総額が1兆円超で欧州の売上高比率が高い10社について調べ、ランキングを作成した。首位のマキタは前期(2024年3月期)の欧州売上比率が46%と過半に迫る水準だ。広報担当者は欧州でシェアトップのプロ用電動工具に加え、チェーンソーや芝刈り機なども需要が高まっていると説明する。
上位10社の今期の想定為替レートの平均は156.04円と、現在の水準と約14円の開きがある。マキタは1円の円安で営業利益に対して9億円弱の押し上げ効果を見積もるほか、キヤノンも開示資料によると、4ー12月期において1円の円安で営業利益を25億円押し上げるという。程度の差はあるが、現在の為替水準が、欧州関連銘柄の業績に対してプラスに働く部分が一定程度あると見られる。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、欧州企業との競争でも円安がプラスに働く余地を指摘する。日本と欧州は自動車など得意分野が重複しており、円安が進んで第三国での日本製品の値下げ余地が生まれれば、価格競争力で優位に立てると話す。
欧州での稼ぎが多い企業として、製薬・医療機器企業が目立った。塩野義製薬は抗エイズウイルス(HIV)薬「ドルテグラビル」や薬剤耐性(AMR)感染症の治療薬「セフィデロコル」の欧州販売が好調だ。同社の欧州売上比率の大半はイギリスが占めており、広報担当者は対ユーロ、対ポンドで円安に振れている現在の状況は収益にプラスに出ていると話す。
ただ懸念もある。キヤノンでは欧州での人件費は円建てユーロ支払いでコストが増える要因ともなり、今後の為替動向を注視するとする。マキタの広報担当者も、急激な為替変動により顧客との価格調整が増えると安定した販売ができなくなるリスクなどについて言及した。