過労精神障害の労災認定はたった2割台!「退職強要」「ハラスメント」…元裁判官が教える「雇用先から心身を殺されない方法」
不当に解雇されたらどうする?
解雇については、まず、少なくとも30日前に予告をするか、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(労働基準法20条1項本文)。なお、負傷疾病後療養・産前産後の各休業期間とそれらの期間後の30日間は解雇ができません(同法19条1項)。 また、解雇については、(1)客観的合理性と、(2)社会的相当性を満たす必要があります(労働契約法16条)。 (1)は、労働者の労働能力や適格性の欠如・喪失、労働者の義務違反や職場規律違反行為、経営上の必要性をさしますが、(1)のような事由があっても、(2)により解雇が社会通念上相当と認められなければ、解雇は認められません。 経営上の必要性に基づくいわゆる整理解雇については、(1)、(2)を具体化した整理解雇の4要件といわれる4つの事情(人員削減の必要性、解雇回避努力、被解雇者選定の合理性、解雇手続の妥当性)を中心とする総合考慮が行われて、解雇の当否が判断されます。 (1)だけではなく(2)も要件とされていること、また整理解雇については4要件が厳しいことから、判例をみると、解雇は、簡単には認められない傾向が強いといえます。もっとも、日本でも、雇用の流動性が適切なかたちで確保され、労働者の転職が容易かつ一般的になれば、この点は、ある程度変わってくるかもしれません。 なお、解雇の有効性を争う事件では、労働者の地位の確認と無効解雇期間中の賃金の支払を求める労働審判や訴訟を起こすことになります。また、この種訴訟では、交通事故損害賠償請求訴訟の場合と同様、当面の金員仮払(賃金仮払)の仮処分の申立てが可能です。 解雇は不当だがもうその企業に勤める気はないという場合(実際にはそういう場合のほうが多いかもしれません)には、不当な解雇によって生じた賃金相当額(6か月分程度)、慰謝料(これは100万円くらいまでで、あまり大きくありません)を請求することになります。 退職強要の場合でもほぼ同様かと思いますが、悪質なハラスメントが伴っていたような場合には、慰謝料が高額になりうるでしょう。 最後に、「懲戒解雇」は、懲戒処分のうちで最も重いものです。これについては、懲戒処分はやむをえないとしてもその方法として解雇を選択することが適切かがよく争われます。懲戒解雇については、解雇予告を伴わない即時解雇が一般的であり(労働基準法20条1項ただし書)、また、退職金も全部または一部が支給されないことが多いので、注意が必要です。