「駐在員と家族の安全確保を」 無差別襲撃事件受け在中日本企業の要望増加、日系団体調査
【北京=三塚聖平】中国に進出する日本企業で作る「中国日本商会」は20日、景気や事業環境に関する会員企業アンケートの結果を発表した。広東省深圳の日本人男児刺殺事件など中国各地で相次ぐ無差別襲撃事件を受け、事業環境に関して「駐在員とその家族の安全確保」を求める回答が増えた。また、中国市場を特に重要な市場だと考えるという回答が初めて50%を下回った。 商会は2023年から四半期ごとに調査を行っている。商会幹部によると、安全確保に関する要望は「これまでの調査と比べて今回は倍以上に増えた」という。企業から「中国での生活に安心感が得られなければ、駐在員や出張者を確保することが難しくなる」といった声が寄せられた。 商会の本間哲朗会長(パナソニックホールディングス副社長)は、「在中日本企業の活動の基本は、勤務する中日の社員とその家族の安全、安心だ。多くの会員企業から安全確保を求める声も寄せられている」と指摘。日中両政府に対し、日本人学校の警備強化など安全に関する支援継続を要望した。 調査では、中国を「一番重要な市場」と「3つの重要な市場の1つ」と考える回答が計49%で、前回調査から3ポイント減少した。中国市場を巡る景気鈍化や競争激化などが背景にあるとみられる。事業環境の満足度に関して「非常に満足」と「満足」との回答が計59%で、前回調査(計58%)とほぼ同水準。改善を望む回答は計41%だった。 今年の中国の景況を前年と比べて「悪化」か「やや悪化」と予測した回答は計64%で、前回調査の計60%から増加した。「改善」か「やや改善」と予測した回答は計11%だった。 今年の投資額について「前年より減らす」か「しない」と回答したのは計44%で、前回調査(計45%)とほぼ同水準だった。計16%は今年の投資額を前年より増加させると回答した。投資に後ろ向きな企業からは「米中貿易摩擦などの今後の国際情勢を考えると積極的な投資ができない」といった声が上がった。 今回の調査は10月15日から11月1日に実施。約8千の在中日本企業などが対象で1513の回答を得た。