やはり政治が悪い、古い人は自ら退くべきーー忖度しない経済作家、高杉良が語る日本
「誰にでも言いたいことを言ったし、書きたいことはすべて書いてきたよ」。大手メーカー、銀行、新聞社から外資、ワンマン会社……ありとあらゆる企業・人をモデルに、高度成長からバブル崩壊、失われた20年と経済小説を書き続けて45年。忖度せず、恐れることなく、時代を象徴する巨大組織に鋭くメスを入れてきた高杉良。経済小説の匠が今、令和の日本に思うこととは。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
針金の入った封筒が届いた
「誰かに毎日つけ回される。わかるんだよね、見張られているって。駅のホームでは真ん中を歩きなさいと親しい弁護士に言われた。家の付近ではアイアンの5番を持ち歩いてね、何かあったらこれで撃退してやろうって。そんなこと、できるわけないんだけど(笑)」 これは約20年前、経済小説家・高杉良が『金融腐蝕列島』シリーズを上梓していた頃のエピソードだ。バブル崩壊からメガバンクの再編へ、平成の金融業界は目まぐるしい変化を遂げた。相次ぐ銀行の不祥事を描いたシリーズは、総会屋やその背後にいる暴力団、右翼の内情までも赤裸々に語られる。高杉良の作品の中でも特に人気が高く、映画・テレビドラマ・漫画化もされている。 「針金の入った封筒がフロント企業の社名入りで届いたり、いろいろありました。連載中の新聞社が警察に相談したら1年ほど『マルタイ』になって、刑事がわが家を警護してくれたことがある。それで何かお礼をしなくちゃ、と言うと、『それならば署内で講演をお願いします』と。出かけてみたら、講堂にすごい人が詰めかけていてさ。驚いたねえ。警察官たちに『起立!礼!』なんてビシッと挨拶されて。まあ、思いつくまま、自由におしゃべりしてきましたよ」 立て板に水。内容は物騒だが、なんだか楽しげに、まるで最近あった出来事のように、高杉は話す。あっという間に相手の心をつかんでしまう。これが、トップランナーたちに胸襟を開かせてきた高杉節か、と膝を打つ。