大利根から大洗へ 久世夏乃香が決意の“@”外しで挑む日本一決定戦
<日本女子オープン 事前情報◇24日◇大利根カントリー倶楽部(茨城県)◇6845ヤード・パー72> 菅沼菜々が安田祐香に熱烈ハグ【写真】 アマチュアとして昨年大会に出場した21歳が、一段とたくましくなって戻ってきた。竹田麗央や川崎春花らと同じ2003年度生まれの“ダイヤモンド世代”久世夏乃香(くせ・かのか)は、1カ月後に迫る最終プロテスト合格に向けて、この大舞台で結果を残すつもりだ。 ゴルフを始めたのは5歳から。地元・大阪のアナン学園高ゴルフ部で腕を磨いた。「一球をおろそかにしてはダメ。一日の練習は100球まで」という父・淳(まこと)さんの教えもあり、“量より質”に徹してきた。その甲斐もあり、昨年の下部ステップ・アップ・ツアー「ツインフィールズレディース」でローアマを獲得するなど実績も残している。 ただ、“ここ一番”で力を発揮できていなかったことも事実だ。昨年の日本女子オープンは予選会を突破して出場したが、トータル11オーバー・111位で予選落ち。2021年からは3年連続で最終プロテストに進出しているものの、いずれも合格ラインには届かなかった。 「2次テストはいつもいい感じで通過するんですけど、2次から最終に向けての間に悩むんです」 殻を破るために何かを変える必要があった。そして至った答えがアマチュア資格を返上し、プロ転向することだった。プロの世界ではたった一打のミスショットで賞金が大きく変わることもある。幼少期から取り組んできた“100球練習”により磨かれた集中力が、より発揮されることにも期待してのことだった。 アマチュアのままならLPGAツアーに出場する道も残る。当初は迷いもあったというが、久世と仲が良い同年代の都玲華の父・英樹さんからの強い勧めもあり、今年から“@”を外すことを決断。すると効果はテキメンだった。ラウンドでは60台を連発。バーディ数が大幅に増加し、それに比例してボギーは減った。負けん気が強く攻撃的なゴルフが持ち味だが、プロとしての自覚が芽生えたことで、より一打にかける思いは強まった。 それはこんなシーンにも象徴されている。今季から出場しているツアー外競技マイナビ ネクストヒロインツアー第8戦でのことだ。16番パー4でのバーディでクラブハウスリーダーの藤川玲奈に追いつき、5ホールのプレーオフ(18番)の末に初優勝をつかんだ。 「最終ホールがすごく難しくて。バーディを取れるようなホールではなかったので、耐えて。追い込まれることが多かったんですけど、集中力を切らさずにできた」と、“プロ初優勝”をかけて挑んだ激闘を振り返る。まさに一打のミスが敗北につながる天王山で勝ち切れたことは大きな収穫だ。 最大の目標はもちろん、最終プロテスト突破で“正真正銘”のプロになること。9月3日から城陽CC(京都府)で行われた第2次予選は、トータル15アンダーで自身初のトップ通過も果たしている。最終プロテスト(10月29~11月1日)の会場は大利根CCと同じ茨城県の大洗GCだが、ともにフラットなコースということもあって「似ている。大洗の方がドッグレッグは多いけど、木の感じもすごく近い。すごくいい練習になります」。 大利根CCは木がせり出している箇所が多く、いわゆる空中のハザードが点在している。フェアウェイの狭さも相まって、選手に大きなプレッシャーを与えるが、それも久世にとってはおあつらえ向き。最終予選への“予行演習”ともとらえている。 「ラフが長くてフェアウェイも狭いし、距離も長い。ラフに入れたらアイアンでしか打てないので、ドライバーを頑張ろうと思います。まずは予選通過を目標に」 6845ヤードはツアー歴代最長。日本ゴルフ協会(JGA)が発表した今年のコースレーティング(難易度)は『80.6』で、2015年大会以降では最高難易度だ。多くのプロが「難しい」と口をそろえるこの難関では、一つのミスが命取りになる。磨き上げてきた集中力を発揮し、最終プロテストへ大きく弾みをつけたい。(文・牧野名雄)