【脅威】南海トラフ巨大地震でも発生する恐れ 東日本大震災で街を飲み込んだ「黒い津波」の正体を検証
宮崎県で最大震度6弱を観測した地震を受け、気象庁は8日、南海トラフ臨時情報「巨大地震注意」を発表しました。南海トラフ地震の想定震源域では、新たな大規模地震が発生する可能性が、平常時と比べて相対的に高まっていると考えられるとの見解を示しました。 <動画で見る>【南海トラフ】最大17mの津波も…その時あなたはどうする?取材で見えてきた「巨大津波」各地の備えと課題 南海トラフ巨大地震が発生すると、何が起き、被害はどこまで広がるのか? 南海トラフ巨大地震で発生するおそれが高いとして、複数の専門家が警鐘を鳴らすのが、“黒い津波”です。 これは、13年前の東日本大震災でも発生し、一瞬で街を飲み込みました。単なる海水ではなく、衝撃力と浮力が増し被害を拡大させたのが、“黒い津波”です。 実際に経験した東日本大震災の被災者の言葉と体験取材から、その脅威と正体に迫りました。 (報告:読売テレビ報道局記者 小川典雅・楠下一輝)
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、これまでに確認された死者と行方不明者は、避難生活などで亡くなった「震災関連死」も含めると、2万人を超えます。 一方、国はマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震が発生した場合、激しい揺れと巨大な津波によって、最悪の場合、死者が32万3000人、全壊・焼失棟数が238万6000棟にのぼるという被害想定を公表しています。(2013年発表)
■「黒い波がすーっと来た。ものすごい水の勢いと破壊力で、目の前で夫は流された」
東日本大震災の発生から13年。2月、私たちは宮城県気仙沼市を訪れました。気仙沼市は太平洋に面した宮城県の最北端に位置し、漁業などが盛んな港町です。あの日、市内では最大で20メートルを超える津波が押し寄せました。 話を伺ったのは、市内で酒店を営み、津波で夫と義理の両親が流され亡くなった菅原文子さん(74)です。菅原さんは、当時自宅近くで友人が撮影した動画を示しながら、語ってくれました。動画には、黒く激しい水の流れが街を覆い、車や大型の船、住宅が流されていく様子が記録されていました。 菅原文子さん 「なんか気配がして2階の茶の間から商店街を見た時に、商店街にすーっと黒い波が来たのよ。地面をはうように本当にすーっと来た」 菅原さんは当時、義理の両親らと2階の茶の間にいました。避難する近所の人たちもいる中、夫の豊和さん(当時62)は、近くの知り合いの様子を見に行きます。自宅に戻ってきたそのとき、津波が押し寄せました。 菅原文子さん 「胸騒ぎがして、すぐ主人を迎えに行って、階段の下から5段目ぐらいで私が手すりをつかみながら、『お父さーん!』と叫んだ。主人は手提げ金庫を持って上がろうとしたが、あっという間に水位が上がって、主人が津波をかき分けるよう私の方に来た。私が「早く早く!」と手を伸ばして、主人の手とふれた瞬間にものすごい勢いと破壊力で、流れが速かったから流された。本来のただの水の波だったら、しっかり手をつないで主人も助かったかもしれない」