大事にしたいのはオリジナリティ。前田美波里「“ここにしかない”舞台に関われる誇り」
ちゃっかり自分を主役に
いろんな役を演じてきて、「自分は役によっても育てられた」という思いも強い。今回の「西の魔女が死んだ」では、不登校になってしまった孫娘の「まい」を預かることになった英国人のおばあちゃん役だ。 「役を演じるときは、毎回、自分との共通点を探す作業から入ります。今回演じるのおばあちゃんは、自分の娘と孫から『西の魔女』と呼ばれていて、生きる上で大切な様々なことを『魔女修行』として、孫娘に手解きしていきます。その修行は、大人の私から見ても、とても自然の理にかなっていて、私までまいと一緒に魔女修行をしている気持ちになります。まいの気持ちと、おばあちゃんの気持ち、両方に共感できるのが、すごく楽しいです」 優雅で朗らかな雰囲気をたたえる美波里さんと、『西の魔女』ことおばあちゃんの共通点は、他にもある。フィジカル面ではとてもリアルな迫力を放っているのに、メンタルの部分では、どことなくファンタジックな要素も持っていることだ。合理的に生きようとするのではなく、あくまでも自然と共生すること。自然が生み出してきた摂理に身を任せること。美波里さんの発する言葉からは、ロマンチックな妖精のような独特の雰囲気も感じられる。聞けば、中学の文化祭で、3年連続「〇〇の精」を演じたことがあるそうだ。しかも自身の作・演出で。 「中学ではダンス部に所属して、創作ダンスというちょっと特殊な部活動をやっていたんです。文化祭のときは、自分で台本を書いて、振り付けも考えて、おばあちゃんに人数分の衣装を縫ってもらったりしていました。あるとき、お琴の『六段の調べ』を聴いたときに、『お琴の精になって踊ってみたらどうだろう? 』と思い立って。光沢のあるサテンみたいな布で、おばあちゃんに着物を縫ってもらって、さらにその布を手に持って踊ったりして。変な生徒でした。でも、何がズルいって、自分で演出しておいて、ちゃっかり自分を主役にしちゃうことよね(笑)」 プロフィール 神奈川県鎌倉市出身。文化学院在学中の1964年にミュージカルデビュー。18歳のとき資生堂のサマー化粧品「太陽に愛されよう」キャンペーンガールとなり人気を博す。劇団四季や東宝主催のミュージカルに多数出演。6月25日~27日 青山草月ホールにてリーディングドラマ「西の魔女が死んだ」に出演。詳細はhttps://ml-geki.com/nishinomajo2024/ 秋田公演もあり。
菊地 陽子(ライター)