都議選で議論になった「二元代表制」 知事と地方議会の理想の関係は?
「連携」「併存」「独裁」3つの類型
さて、二元代表制の「首長=議会連携型」が、首長の独任制と議会の合議制を二つの軸にして両者が最善の結果を生み出す理念型としてあるとすれば、首長の独任制が議会の独自性を発揮させずに首長の支配下に掌握する「首長独裁型」と、他方で、議会の合議制が議会の中から強力なリーダーを輩出し首長を議会の下請け機関として駆使する「議会独裁型」も、理念型としては想定することができます。「首長独裁型」は独任制で一つの意思が最初から存在しており、首長の強力なリーダーシップがあれば可能で、「議会独裁型」に比べてはるかに現実的です。 橋下徹大阪府知事(当時)の地域政党「大阪維新の会」による議会掌握の試みは、議会の中に首長主導の“与党”を構築し、首長と与党で野党と対決する「首長=与党」一元体制の構築を目指す「首長独裁型」で、実質的には首長の独任制への一元化を追求するものと言えます。 そして、制度的にも二元代表制ではなく「議院内閣制」を地方自治のあり方として追求しようという試みもなされました。橋下府知事は当時、英国の地方政治制度やフランスの半大統領制などを参考に、 地方議会の改革構想として「議院内閣制型の議会内閣制」を主張していました。「首長が、議会の推薦を受けた議員を“内閣構成員”として政治的任用することで、首長と議会が行政のあらゆる経営判断と責任を共有する」(第2回地域主権戦略会議への提出資料、2010年3月3日)という構想です。 これは、首長と議会の二元代表制下の「首長=議会連携型」の構想とはまったく異なる、首長主導による「首長=与党」の一元体制、ひいては「首長=議会」の一元体制を目指すもので、首長主導の下に議会を掌握しようとする「首長独裁型」への動きでした。 ところで、こうした3つのどのパターンにも入らない「首長=議会併存型」ともいえる類型があります。その中には、首長と議会の「癒着」「対立」のパターンも含まれますが、これらはすべて、首長の独任制と議会の合議制というそれぞれの独自性を発揮することもなく、首長と議会最大会派がそれぞれの領分と既得権を保守することを最大の関心に動いているタイプで、根本にあるのは、首長と議会の「併存」です。 なお、上記の「首長=議会連携型」「首長=議会併存型」「首長独裁型」の3類型はあくまで理念型であって、現実の自治体は、純粋にこの類型に当てはまるというものではなく、混合型であることは言うまでもありません(念のため)。最後に、これを踏まえて、小池都知事と都民ファーストの会の今後を考えてみます。