都議選で議論になった「二元代表制」 知事と地方議会の理想の関係は?
「新しい議会」へ改革体制築けるか
今回の都議選で、小池都知事は地域政党「都民ファーストの会」代表として、「古い議会」から「新しい議会」へと議会改革を真正面から掲げて圧勝しました。選挙戦では、自民党を最大会派とする都議会を馴れ合い癒着の「首長=議会併存型」として批判し、首長が主導する議会改革の主体に自らの与党として「都民ファーストの会」を送り込んだわけです。この限りで、「大阪維新の会」を率いる橋下府知事(当時)のそれと同じパターンで「首長独裁型」による都議会掌握の試みであると言えます。
にもかかわらず、そこには大きな違いもあるように思われます。選挙翌日、小池都知事が「都民ファーストの会」の代表を辞任したことは、その違いを示唆しているように見えます。なぜなら、「二元代表制等々への懸念があることも想定すると、私は知事に専念する」として代表を辞任したということは、小池都知事は、明確に二元代表制の理念の下に都政運営あるいは議会改革に臨むということを表明したと言えます。橋下氏=「大阪維新の会」のような一元的な「首長独裁型」を追求する姿勢はとらないとの表明であるからです。ましてや、古い自民党的な「首長=議会併存型」と決別することは、選挙中も含めて小池都知事の一貫した姿勢であることも間違いないはずです。 とするならば、知事と議会というそれぞれの独自性を発揮した「首長=議会連携型」を追求する以外には、その選択肢はないはずです。小池都知事、そして「都民ファーストの会」は、首長と議会の二元代表制をどのように理解しどう運営し、どのような新しい議会慣行や制度を築き上げていくのかが問われているわけです。 「都民ファーストの会」は議会最大会派としてのリーダーシップを発揮して、議員や政党・会派が共有できる都議会の定義を「議会基本条例」として制定することができるのか、そしてそれに基づく議会改革の計画と体制を築き上げることができるのか。また、小池都知事は、議会改革のために必要な、議員・政党・会派の政策立案・決定・評価能力形成に資する議会事務局の体制を整えることができるのか。小池都知事が都民ファーストの会や議会と今後どのような関係を築いていくのかは未知数ですが、都議会が、今、新しい議会に生まれ変わることができるのかどうか、その正念場に立たされていることだけは間違いないように思われます。
------------------------------ ■小畑隆資(おばた・たかよし) 岡山大学名誉教授。名古屋大学大学院法学研究科博士課程、名古屋大学法学部助手などを経て、1976年4月岡山大学法学部講師。1985年岡山大学法学部教授。日本政治史、日本政治論を担当。2010年3月退職。自由民権の思想と運動の研究。最近は現代日本政治も研究。『基本的人権の政治学』(単著、岡山県民主教育研究会、2014年)、「地方議会と二元代表制――「議会基本条例」の意義」(岡山県議会ホームページ「議会基本条例を読む」、2013年)など