都議選で議論になった「二元代表制」 知事と地方議会の理想の関係は?
「合議機関」としての議会の独自性
しかしながら、議会が「議決機関」であることと、それがどのようにして「チェック機能」を発揮することができるのかについては、議論が深められることはありませんでした。そこで、あらためて首長と議会について、それぞれの独自性について見ておきます。 首長とは、条例、予算などについて議会の議決に基づき行政事務を管理・執行する「執行機関」を所轄する者で、行政権の長のことを言います。そこでの最終的な判断と責任はこの組織の頂点に立つ首長1人が負うことになります。これを「独任制」と言います。 それに対して、議会は、主として条例を制定したり、改正・廃止したりし、予算を定め、決算を認定する議決機関、すなわち“立法機関”です。議会(議決機関)は、首長(執行機関)とは異なって、立場が対等平等な複数の議員から構成され、その議決にいたる過程までにいかに議論を深め、議会としての合意形成にたどりつくのかが、議会のあり方を規定していくことになります。 こうした議会のあり方を「合議制」と言い、議会は議決機関であると同時に合議機関であるという点で、首長(執行機関)の「独任制」とは異なる大きな独自性をもっています。都知事1人に対して都議会議員127人の意味がそこにあるわけです。 都議会がその存在意義を発揮できるのは、127人いるからこそ出来る役割がある、ということにあるはずです。議会が有効な仕事ができるのは、第一に議員が年齢・性別・職業・思想など実に多様な多数の人々から構成され、しかも多様な地域から選出されてきているという点にあります。議員はそれぞれ直接に有権者の身近な存在として、その生活の実態に触れ、その多様な声を聴き、それらを政党や会派を通じて議会全体の政策として反映していくことが基本的な仕事です。 第二に、そのために必要なことは、有権者の切実な現実を踏まえた上での議員同士の議論であり、政党・会派間の議論です。こうした合議機関としての役割を尽くすことが議決機関としての役割を果たす上で不可欠なわけです。 そして、この過程は、有権者に開かれた過程として公開性が確保されなければならず、有権者に対する説明責任を果たさなければなりません。 こうした議会の「合議機関」としての役割の遂行によって、はじめて「議会のチェック機能」が発揮できることになります。首長1人では有権者との通路は狭すぎます。また、その判断も独断的になったり恣意的になったりする危険性があります。また職員はどうしても有権者の声を行政的な事務問題として事務的に処理しがちになります。議会の独自の役割は、この「首長=執行機関」の限界をチェックして、場合によっては補完し、さらには自ら発案して条例を制定することにあるわけです。