MLBで検討中の「ゴールデン・アットバット」に非難の嵐も、頭ごなしには否定できない?【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第144回
先日、MLBで「ゴールデン・アットバット」という新ルールが議論されていることがニュースになりました。「好きな打者を試合中に1度だけ、好きな場面で打席に立たせることができる」というもので、多くの野球ファンから非難が殺到しました。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー 報道によると、このルールの骨子はこんな感じです。 ・1試合につき1度だけ権利を使える ・7回以降に限定する ・9回に負けているチーム、同点の場合に限る そのほか、複数の意見が出たそうです。 選手やファンはもちろん、OBたちもこの案に対する嫌悪感を隠すことはありませんでした。たとえば、試合終盤のピンチの場面で大谷翔平選手を打ち取った直後に、ふたたび大谷選手が打席に立つ可能性があるということ。相手投手からしたら、なんともやるせない気持ちになるルールです。 「打順」という野球の醍醐味のひとつを無視してしまう、なんとも大胆な意見ではあります。ただ、大きな議論を巻き起こしたことは、ある意味で成功だと言えるかもしれません。 今ではお馴染みの「ピッチクロック」も、昨年に導入された当初は大きな反対に遭いました。 野球とは"間"のスポーツですから、「ルールの導入で勝負が味気なくなってしまうのではないか」と懸念した人は多く、私も当時は疑問がありました。導入した目的が「試合時間の短縮=興行的な魅力を高める」という点も、投手や選手の視点に立っているのかな?と感じたのです。 なにより、私たちが愛してきた野球というスポーツが変革してしまうことを恐れたのかも知れません。だから本能的に反対したのかも。野球を楽しむ年月が増していくごとに、新しいことを簡単に受け入れられなくなっているのを感じます。 しかし今は、私も含めて「ピッチクロックなかった頃には戻れない」と思っている人も多いはずです。テンポのいい試合は見ていて気持ちがいい、とさえ感じるようになりました。 一方で、投手の怪我が増えたと指摘する声もあり、「本当の答えが出るのはさらに数年後」とも言われていますが、ピチクロック導入で感じたのは、"変わる"というのはそんなに悪いことではない、ということでした。